働く人の健康を守るために、職場は原則として禁煙にする。
他の人のたばこの煙を吸う、いわゆる
受動喫煙による健康被害をどうすれば妨げるかを検討している
厚生労働省の
有識者検討会が、こんな考え方を報告書の案の中心に据えた。
4月にもまとめる報告書を受けて、
労働政策審議会が
労働安全衛星法にどう盛り込むか、議論するという。
今度こそ、受動喫煙による健康被害を確実に防ぐための法整備を実現させてほしい。受動喫煙の防止をうたう
健康増進法は( 41 )、努力義務にとどまっている。
「たばこの煙にさらされることからの保護」を求めるたばこ
規制枠組み条約(FCTC)が発効して今月末で5年。そのガイドラインは、受動喫煙を防ぐための法整備も求めている。
鳩山政権が誕生して、たばこ値上げなどの政策がやっと動き出した。民間のシンクタンク、日本医療政策機構の世論調査によると、現政権の医療政策の中で、たばこ増税は、事業仕分け、医師数の増加に続いて高い評価を得た。たばこ対策のいっそうの推進が、国民の期待に応える道だ。
報告書案はまず、受動喫煙による健康への影響は、科学的な証拠によって明白であることが世界的に認められているとした。
そのうえで、それを防ぐには、一般の事務所や工場は全面( 42‐a )とするか、煙のもれない( 42‐b )室以外では禁煙にすることを提案している。
飲食店などはどうか。従業員の健康を守るには、一般の事務所と同様の原則が必要だ。しかし、成人男性の喫煙率が( 43 )3割以上あり、客の喫煙を一律に禁止するのは難しいと飲食店などには抵抗が強い。それを考慮して、換気の徹底などによって、可能な限り従業員の受動喫煙を防止すること考求めるにとどめている。
だが、成人人口の8割近くはたばこを吸わず、喫煙者の7、8割は禁煙を望んでいることにも目を( 44 )。
海外に目を転じれば、たばこと酒は切り離せないと思われていた国々でも政治の指導力で着実に禁煙が進む。
英国はプレア政権が1997年に禁煙への取り組みを宣言、10年後の2007年に衛生法が施行されてパブなども禁煙となった。
台湾でも昨年、たばこ煙害防止法が施行され、公共の場からあっというまに煙が消えた。今や、ホテルも禁煙ルームだけだ。
世界で( 45 )禁煙が進めば、煙たい日本は、禁煙が進む外国からの観光客に文字通り煙たがられる。
何より、受動喫煙を確実に防いですべての国民の命を守らなければならない。職場の全面禁煙を目標に掲げて一歩を踏み出すときだ。
(「朝日新聞」2010年2月19日付)