海辺で遊んだ名残の砂かが、脱いだ靴からこぼれ出る。さらさらした感航と共に、灼けるビーチでのあれこれがよみがえる。砂はその地に立った証し。旅先の思い出を、世界に一つの砂時計に仕立てるのもいい。
 さて、小惑星のイトカワ(注1)の「思い出」を期待された探査機はやぶさである。カプセルをX線で訪べた(50)、1ミリ以上の砂粒はないと分かったそうだ。ホコリ状の微粒子が入っている可能性はなお残るという。
 砂がとぼれ(51-a)、はやぶさの功績が減じる(51-b)。小惑星に隆りたのも、戻ってきたのも初めてだ。イトカワ表面に黒く咲った特徴的な(52-a)、南十字(注2)が輝く天の川(注3)で燃え砕け、カプセルだけが(52-b)の尾を引いて地上に向か(52-c)は、私たちの胸に熱く残るだろう。
 ピーナツ形のイトカワは長さ約500メートル。パリのカフェに豆粒が転がっているとして、東京からそれにようじを命中させるだった。数々のピンチを切り抜けての7年、60億キロの旅は、国民を(53)。手柄はすでに大きい。
 これで、日本の宇宙開発を取り巻く空気は一変した。科学予算を削り倒すかにみえた事業仕分け人、運航さんも「全国民が誇るべき偉業。世界に向けた大きな発信」とたたえる。科学者たちにすれば、この上ない孝行者であろう。
 カプセルがイトカワの物質をわずかでも持ち帰っていれば、太陽系の起路を探るの起源を探るのに貴重な資料になる。大きな誠りに小さなホコリが花を浅え……いや、それは(54)。どんな旅も、つつがなく(注4)帰ってくるのが何よりの耳産なのだから。
-(博日新聞」く天声人妥>2010年月22日付)|
(注1)イトカワ:日本のロケット開発をした糸川英夫教授の名前が付けられた小惑星。
(注2)電十字:南十字星
(注3)天の川:川の流れのように見える無数の星の集まり。
(注4)つつがなく:無事に。

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