回復しつつある世界経済に、日本もしっかりと支えられている。2009年10月~12月期の
国内総生産(GDP)の
実質成長率は
年率換算で46%増となり、不況下でも景気が徐々に上向いている様子を確認できた。
デフレで名目GDPの伸びは年率0,9%にとどまり、回復を実感するにはほど違い。だが実質GDPが3
四半期連続で増え、名目もプラスに転じたことは明るい兆しだ。
輸出では、世界の景気回復をリードしている中国などアジア向けが全体を押し上げてている。米国や欧州向けも自動車などが復調した。
同じ時期に、中国は前年
同期比実質10,7%の高成長を記録。米国も前期比の年率換算が57%、欧州のユーロ圏16カ国は同0,4%で、それぞれ2四半期連続のプラス成長だつた。回復に向かう各国の足並みがそろう( 41 )、日本への波及効果も大きくなってきたようだ。
内需は家電製品のエコポイント、エコカー減税などで個人消費の( 42‐a )が続いた。
景気の足を引っ張ってきた住宅建設も、( 42‐b )幅が縮まった。
動向が注目される設備投資は、7四半期ぶりにプラスに転じた。自動車、パソコン、IT(情報技術)関連ソフトウェアなどの分野が息を吹き返し( 43 )。手放しで楽観はできないが、心強い動きだ。
年明け後も、為替相場や株価の水準はおおむね安定している。米国経済の先行きに対する懸案や、中国政府の引き締めの動きなど不安な要素はあるが、それでも日本経済が景気の「
二番底」に陥る危険性は( 44 )とみていいだろう。
だが、自律回復といえるほどの力強さはない。生産はピークの8割、機械受注は7割にとどまっている。09年の雇用者報酬は過去最大の落ち込みで、失業率も5%を超えたままだ。景気対策の効果は、やがて落ちてくる。
鳩山政権は、昨年末にまとめた成長戦略の基本方針を早期にしっかり肉付けし、民間の設備投資や雇用拡大の意欲を引き出す必要がある。
環境など先端技術分野をさらに伸ばす。医療、福祉、介護をはじめとするサービス産業をテコ入れし、雇用と所得を底上げする。貿易自由化を進展させ、企業の
新興国市場への参入を大いに刺激しなければならない。
09年の名目GDPで日本と中国の差は詰まり、ことし中の逆転は必至だ。日本は高度な技術を生かした多様な付加価値で勝負する知識集約型資本主義への脱皮が一段と( 45 )。
経済成長のエンジンの役割を担う企業は、政府の支援を待っているいとまはない。新しいビジネスチャンスを積極的につかむことで、自律回復への道を切り開きたい。
(「朝日新聞」2010年2月16日付)