日本映画は、アメリカのハリウッド(注1)映画に大きく影響を与えている。
 例えば、日本を代表する映画監督である黒澤明(注2)の作品の中に「七人の侍(注3)」という映画がある。1954年に作られたが、現在でも世界の映画の中で最高の作品の一つだと、多くの国で大変高く詳価されている。
 この作品のすばらしい点は、人間とは何かということを、見る人に考えきせるということだ。私は、映画はそうであってほしいと思っている。つまり、ただ観て楽しなのではなく、私たちの内面を豊かにしてくれるメッセージを持っていてほしいのだ。この映画の場合は、それは最後にあらわれる。敵との戦いに勝って目的を果たした主人公が、「勝った」とは言わず、①「今度もまた負けた」と言うのだ。この最後の一言で、映画の雰囲気は大きく変わる。「勝った」と思った観客は、この言葉を聞き、不思議に思う。そして「勝つとか負けるとかいうのは、どういうことなのか」という深い問いを心に持つ。そのまま映画を見終わることになり、見終わった後もそのことについて考え続けるのである。
 これが、②ハリウッドで作られた映画だったら、と考えてみよう。たぶん、日的を果たせば任務完了、それでハッピーエンドだろう。勝ちと負けは、はっきりと区別できるのである。しかし、黒澤作品に代表きれる日本映画はちがう。白と黒の間に灰色があることを伝えているのだ。
 ③だからこそ、日本映画にハリウッドの人々は大変驚いた。そして、日本映画に影響された作品が数多く作られた。大ヒット映画「スター・ウォーズ(注4)」もその一つである。
(注1) ハリウッド : アメリカのロサンゼルス市にある地区。映画産業の中心地。
(注2) 黒澤明 : 1950年代から2000年にかけて活躍した日本の映画監督。その作品は世界中の映画祭で賞を受けており、世界の多くの映画関係者から映画監督としての力を高く評価されている。
(注3) 「七人の侍」: 農民に雇われた7人の武士が、いろいろな間題を解決しながら、乱暴な野武士の集団と戦う物語。
(注4) 「スター・ウォーズ」 : 1977年に公開されたアメリカのSF映画シリーズ。 映画だけでなくコミック、ゲーム、アニメーションなど多くのメディアで展開される。世界で最も人気のある映画シリーズの一つ。ジョージ・ルーカス制作、監示。

1。 (34) 映画に対して、この文章を書いた人はどう考えているか。

2。 (35) ①「今度もまた負けた」について、この文章を書いた人はどう言っているか。

3。 (36)どうして7②ハリウッドで作られた映画だったら、と考えてみようと言っているのか。

4。 (37) ③だからこそというのは、どういうことか。