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ネズミにえさを与え、食べて数日後に体重を測ると、えさが体に入った分体重が増えているでしょうか。そうではなく、①体重は増えていません。今から約70年前にドイツの研究者がこの発見をし、どうしてなのか研究しました。彼は、食べ物はネズミの体の中に溶け込んで、それまでの細胞と入れかわり、体の一部になってしまうと考えました。それまでの細胞(注)は体の外に捨てられるのです。このように動物は、物を食べることによって、細胞がどんどん変化しています。
人間の体も同じです。それまでの体の細胞は、新しく入ってきた物と入れかわります。ですから、1年ぐらいたてば、体の中はすっかり新しい細胞に変わっているのです。この点から言えば、何年も会わなかった人に会ったとき「お変わりありませんね」とあいきつする表現は、②正確でないということになるでしょう。
ですから、「人間は食べる物によってつくられる」というのは事実なのです。食べる物を軽く見てはいけない、というのは、こういうことから来ています。
(注) 細胞 : 生物を作っている基本の単位