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日本には浮世絵(注1)という美術があります。これは江戸時代(1603~1868)に江戸(今の東京)の町人(注2)の問ですごく大気があったもので、版画(注3)、つまり名刷したものですから何枚も同じものがあり、一枚が今でいうと数百円で買えたそうです。歌舞伎(注4)の人気役者の絵や、旅行ガイドのように江戸の町や富士山をいろいろな所から見て描いた絵もありました。当時、ヨーロッパなどでは、芸術はー部の上流階級だけのものでしたが、日本では一般庶民が絵を買って楽しんでいたのです。江戸時代は、戦争のない時代でしたから、江戸や大阪の町人たちの間で華やかな文化が花開いたのでしょう。値段も安くとても身近なものですから、日本人はこの浮世絵に芸術的な価値があるとは思っていませんでした。その価値を教えてくれたのは、江戸時代の終わりから次の明治時代(1868~)にかけて日本に来ていた西洋人たちだったのです。そして、これはフランスの美術にも大きな影響を与えました。
(注1) 浮世絵: 江戸時代に発達した民衆的な風俗画。版画が多い。
(注2) 町人 : 江戸時代に都市に住んでいた商人や職人の身分の人。
(注3) 版画 : 木などに絵をほり、それで印刷したもの。
(注4) 歌舞伎 : 江戸時代にできた日本独特の演劇。