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「一年の計は元旦にあり」という言葉がある。何事も準備が大切だという教えのようだが、元旦、つまり一月一日にいい朝が迎えられれば、新しい一年が良い年になるという意味でもある。このような考え方がもとになって、初日の出を見る習慣が生まれたのだろう。一年を迎えるにあたり、日の出を見て新しい一年について祈ると、穏やかで澄すんだ気持ちになる。もともと農業を営いとなんできた日本人にとって、太陽は生活と深くかかわる特別な存在だった。太陽を神のように扱い、日の出を大切にするのは、世界各地で見られる習慣でもあるそうだ。
最近は、都心の高層ビルなどで、多くの人に初日の出を見てもらおうと、元旦の早朝に特別に展望台を開放するところもある。若者わかものが日本の伝統でんとうに目を向けるきっかけとなればよいと思う。
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最近では、高層ビルなどの展望台の多くが初日の出のための来場を期待し、1月1日の早朝に特別営業をするようだ。事前に申し込まなくてはいけないが、希望者が多く抽選ちゅうせんになることも多いという。
考えてみれば不思議だ。正月にだけ日の出を見たがるのは、なぜなのか。初日の出とともに「年神様」が現れると信じられていたという説もあるが、年神様を迎える儀式としては、日の出を見るよりも家の中で四方(東西南北)を拝むというのが伝統的な形だ。初日の出が注目されるようになったのは、日の出が戦い勝つす姿を表すと考えられたためで、明治以降の戦争中のことだとも言われる。そう考えると、我々は現代のこうした“展望台ビジネス”に少々踊らされているのかもしれない 。