本来、自由なアイディアを出しあうつもりで開いた会議なのに、いざやってみると「発言する人が少ない 」「活発な議論にならない」「伝達や報告だけで終わってしまう」といった結果になってしまう。そんな現象に誰もが覚えがあるのではないでしょうか。
なぜこんな事になってしまうのでしょうか。本当にだれも発言することができないのでしょうか。発言や意見を白発的にしてもらうためには、何が必要なのでしょうか。①
こんなとき進行役や上司が言いがちなのがこのセリフ(注1)です。「とにかく何でもいいから意見を言ってくれ」こんなふうに迫るやり方は効果的でしょうか。残念ながら、このやり方は、あまり効果を発揮する場面は多くないようです。なぜなら本当に何でも言っていいという土壌(注2)を持っている会社は
稀有でしょうし、そんな会社であればこんなセリフは飛び出してくるはずもありません。「何でもいいからって、何を言えばいいんだよ。あんたが辞めるのがー番だって言ってもいいのかよ....」参加者は心の中でこんな愚痴を言う(注4)のが関の山(注5)です。その場の「目的」がく分からなければ、どう発言したらよいか分かりません。だからここでも「日的を明確にすること」は前提として必要なことです。更に発言が少ない要因をよく考えなければなりません。いろいろなケースが考えられると思いますが、「考えがまとまっていないので発言できない」「こんなこと言ったらバカだと思われるのではないか」「上手に言うと、言いだしっぺ(注6)に仕事が回ってくるし」というような心理が、発言を止めている感じはしませんか。つまり、なんらかの防衛(注7)意識が働いて、黙っている。②
こういう覚えは誰にでもあるはずです。もしもそんなこと考えたことがない、という方がいたら、「独演どくえん会現象」を自ら発生させていないか、疑ったほうがいいかと思われます。
一生懸命、防衛しているところに、更に、「意見を言え」と迫っても、ますます防御(注8)を固くするばかりです。
不安や恐れは、人間に対して、多くの行動や発言を阻害します(注9)。結果として余計率直な発言や行動がやりづらくなるわけ。必要なのは、安全な場をつくることです。発言しても、それを受け入れてもらえるという場づくりが重要です。当然、議論には反対意見や指摘もあるでしょう。しかし、まずは一つの貴重な発言として受け入れられること。もし反対や指摘があれば、その後にすればいいのです。「一度は必ず受け取る」という習慣が、その組織にあるか無いかが、活発な議論になるからないかを左右します。
(山田豊『会議で事件を起こせ』新湖社)
(注1)セリフ:話すことば
(注2)土壌:環境
(注3)稀有:大変めずらしい、ほとんどない
(注4)愚痴を言う:言ってもしようがない文句を言う
(注5)関の山:それしかできないこと
(注6)言いだしっぺ:はじめに言い出した人
(注7)防衛:危険を防ぎ、身を守ること
(注8)防御:危険を防ぎ、身を守ること
(注9)阻害する:じゃまをする