人の縁
(注1)とは、不思議なものです。
本日、新たな人生の門出
(注2)をおふたりで迎えられた寛君、千華さん。その披露宴で、こうしてお祝いの言葉を述べさせていただくご縁を、①
何やら不思議に感じます。この晴れの日を迎えるまで、新郎と私との交流があたたかく続いたことを、うれしく、またありがたく感じております。
新郎の寛君と私が初めて会ったのは、私と妻の新しい人生の旅立ちのときでした。つまり、私自身の結婚披露宴の会場で。と言えば、寛君と私が、どんなに長い付き合いであるか、容易に想像していただけるでしょう。
私たちの初めての出会いから、早や二十四年が経過いたしました。あのとき、寛君は六歳、小学校一年生。いまでもはっきりと覚えています。金のエンブレムをつけたブレザ一に、スラックス。ぴかぴかに磨いたローファーを履いて。来賓のかたがたをお迎えするのに、披露宴会場の入口で、妻とともにかちんこちんに固まっていた私のところへ、父上に連れられて、②
小さな紳士はやってきました。そしてこう言ったのです。
『おじさん、よかったね。こんなにきれいなお嫁さんで』
(原田マハ『本日は、お日柄もよく』徳間書店より)
(注1)縁:縁。人と人とのつながり。
(注2)門出:旅をするため家を出ること。