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 大昔は、 花粉症(注1)という病気はありませんでした。
 恐竜がまだ地球上にいた二億年前、地球で最初の哺乳類(注2)が誕生しました。でも、当時の哺乳類は皮膚に取りついて血を吸う吸血きゅうけつダニ(注3)に苦しめられていたそうです。それは、吸血ダニに対する免疫めんえきシステムがなかったからです。
 しかし進化の過程で、哺乳類は吸血ダニに対抗する新しい免疫めんえきシステムを獲得しました。ここにも突然変異があり、たまたま吸血ダニへの免疫システムをつくった哺乳類だけが生き延びたということです。
 この免疫システムは、吸血ダニを異物と判断して、それを退治(注4)する物質を放出します。こうして哺乳類は、吸血ダニを撃退することができるようになったのです。
 現在の日本のような清潔な環境では、かつてほどダニに悩まされることはありません。そうなると、吸血ダニと戦っていた免疫システムが、宝の持ち(注5)腐ぐされになります。そのために、たまたま外から入ってきたものを、敵と見誤みあやまって攻撃するということが起きるようになってしまいました。このとき、吸血ダニと勘違いされるのがスギ(注6)花粉なのです。スギの花粉が入ってくると、人間の免疫システムが誤って作動し、吸血ダニ退治の物質を出す。そのせいで、目がしょぼしょぼしたり、くしゃみをしたりすることになるわけです。
 こうして見ると、花粉症という病気は、私たちの環境があまりに清潔になりすぎることでもたらされた(注7)病気だということがわかります。
(注1)花粉症:花粉によって起きるアレルギー
(注2)哺乳類:子を乳で育てる動物
(注3)ダニ:小さな虫
(注4)退治:悪いものをうち滅ぼすこと
(注5)宝の持ち腐ぐされ:役に立つものを持っていながら、それを使わないこと
(注6)スギ:木の名前
(注7)もたらす:起きる

1。 (60)この文章によると、哺乳類が進化しながら得たものは何か。

2。 (61)誤って作動とあるが、どういことか。

3。 (62)この文章によると、花粉症は何だと述べているか。