手を用いて数を表すという習慣は世界中で広く見られる。手で数を表すのには二つの場合があるようだ。一つは自分で数を数える場合、一つは相手に数を示す場合である。どちらの場合にしても、具体的な手や指のしぐさには3種の方が認められる。
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第1は指の開閉、すなわち指を立てる、折るというしぐさによって数を表すやり方である。たとえば、フランス人やイタリア人は数を示す場合、まず右のこぶしを握り、親指、人差し指、中指…の順に立てていき、1、2、3…を表す。6以上は左手の指に移ることが多い。一方、ものの数を数える場合には、親指から順に立てた右手の指を、確かめるように左手で押さえていくことがよくある。アメリ力では逆に、小指から順に押さえていく方法が見られる。日本人は、相手に数を示す場合、握ったこぶしから人差し指、中指、薬指、小指、親指の順に立てていき、1から5までを表す。一方、数を数える場合は、まず片手を開き、それから親指、人差し指、中指…と順に指を折って、数えていく。
第2は、指の関節に数をあてはめていくやり方である。代表的な例はベンガル人の数え方である。まず、親指の指先で同じ手の小指の一番下の関節から始め、指先まで1、2、3、4と押さえる。次に、薬指の一番下の関節から指先まで5、6、7、8と押さえる。
それから中指、人さし指へ移る。最後に親指を人さし指で押さえる。こうして、片手で20までの数を数えることができる。
第3は、その土地の独特のやり方で、ほかの土地の人間には類推不可能なものである。中国の数の示し方がそのよい例である。たとえば、親指と小指を立てて6を示す。人さし指を曲げて9を示す。10を示すには、人さし指と中指をからめる
(注)やり方と、両手の人さし指を交差させるやり方がある。これらは漢字の十の形を表した者と考えられる。また、片手を広げ、裏返すことによって、10を表すこともある。これは中国語では、ものを倍にするという意味と、手のひらを裏返すというしぐさが、どちらも【翻(フォン)」という動詞によって表されるためである。
このように、手や指による数の表し方には3種の型がある。中でも、指を用いて数を表すという習慣は、十進法の根拠と言われており、世界中で広く見られるものである。
(野村雅ー『ボディランゲージを読むパこよる〉
(注)からめる:交差させる