(3)
「正社員として採用するのは即戦力か、即戦力になれる人材だけ。この方針は変えない」。ある企業の採用責任者はこう断言する。景気回復で企業は採用を増やしているが、リス卜ラで社員にかける教育訓練費を減らす傾向にあり、採用段階で若者に求める能力、技術の水準は高くなるばかり。
正社員としての就職に失敗し、パート・アルバイ卜では自分のやりたい仕事が見えない。そんな若者のミスマッチ(すれ違い)が深刻化し、新たなニートが生まれかねない。
さらに、いったんニートになってしまうと、なかなか抜け出せない。労働経済白書によると、02〜04年のニート数は変わらないのに、25〜34歳までに限ると35万人から37万人へと一万人ずつ「高年齢化」している。
独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の調査では、ニートの4分の3は親と同居している。親の定年や死去などで経済的な後ろ盾を失えば生活は行き詰まり、生活保護などの公的支出が増える可能性がある。収入がなくて社会保険料を納められなければ、高齢世帯を支える年金や介護など①
社会保障の仕組みも、土台が崩れる。
第ー生命経済研究所の試算では、若者の能力向上や不登校生徒を減らす有効な対策がとられないと、10年後にはニー卜が109万人に膨らむとされている。
(朝日新間朝刊2005年8月1日による)