(1)木は、地球の環境をまもるために、さまざまなはたらきをしていますが、くらしをささえる資源としても、とても大切です。家をつくる木、家具や道具にもたくさん木が使われています。
  日本で毎年使われている木材の量は、約1億1000万立方メートルです。そのなかで国内で生産できる量は約20パーセントの2200万立方メートルだけで、足りない分は、アメリカ、カナダ、東南アジアなどからの輸入にたよっています。
  年間の輸入量は、約8834立方メートルです。そのうち32パーセントが住宅施設に使われ、残りのほとんどが紙を作るためのパルプ(注1)の原料です。原料となる木は、現地でこまかくくだかれ、チップ(木片)にして船で運ばれてきます。
 新聞や本やノートのほかにも、私たちまわりには、たくさんの紙製品があります。牛乳やジュースなどの容器として使われている紙パックだけでも、毎日約8500本分のチップが使われています。①これは電話(ちょう)(注2)換算(かんさん)すると125冊分で、つみ上げると高さ5.6メートルにもなります。
 このように日本は大量に木材を輸入しているので、森林破壊(はかい)砂漠化(さばく)(注3)につながると世界中から非難(ひなん)されたことがあります。たしかに②その危険があります。そこでその危険をふせぐため、製紙会社やボランティアが中心になって、世界各地で植林活動をすすめています。

(七尾純「資源とエネルギー」『環境のことば辞典③』大日本図書)

(注1)パルプ:木材や植物などから繊維(せんい)を取り出したもの。紙などの原料
(注2電話(ちょう):電話番号や名前、住所などが書かれた本の形のもの
(注3)砂漠化(さばく):森林や草原などに植物が生えなくなり、砂漠に変化すること

(60)輸入される木材の6割以上は、どんなことに使われているか。


(61)「①これは」は何を指しているか。


(62)「②その危険」は何を指しているか。


 (2)阪神(はんしん)淡路大震災(あわじだいしんさい)(注1)のとき、被災(ひさい)した人が最も困ったことは、①ライフライン(電気・水・ガス)が寸断(すんだん)され、たとえ家の破壊(はかい)(まぬが)れても日々の生活ができなくなったことです。その理由は、電気は電力会社に、水は自治体に、ガスはガス会社にと、私たちが命綱(いのちづな)(注2)を「お任せ」する体質になってしまっているためです。()()えると、ライフラインを大型化・集中化・一様化のシステムに組み込まれてしまったのです。そのシステムは効率的ですが、②急所をやられると全てが止まってしまい、被害が拡大することを示しています。
 「文明が進化するとともに災害も進化する」例といえるでしょう。③各家庭あるいは地域レベルでライフラインを確保することの重要さを、あの大震災が教えているのです。つまり、文明化した社会は、むしろ小型化・分散化・多様化した技術えと転換しないと実に脆弱(ぜいじゃく)(注3)なのです。それら一つ一つは非効率のように見えますが、小回(こまわ)りが聞き(注4)(緊急の場合に好都合(こうつごう))、複数の技術を組み合わせるとそれぞれの長所・短所が(おぎな)()えるという良さがあります。

(池内了『ヤバンな科学』晶文社)

(注1)阪神(はんしん)淡路大震災(あわじだいしんさい):1995年1月17日に起きた地震。兵庫県、大阪府、京都府の各地で死者6300人の大きな被害を出した。
(注2)命綱(いのちづな):生命や生活を支えるために大切なもの
(注3)脆弱(ぜいじゃく):壊れやすくて弱いこと
(注4)小回(こまわ)りが利く:その場にあわせて使えること

(63)大震災(だいしんさい)で「①ライフライン(電気・水・ガス)が寸断(すんだん)され」たときに明らかになった問題点は何だと言っているか。


(64)「②急所をやられると全てが止まってしまい」とあるが、どんな意味か。


(65)「③各家庭あるいは地域レベルでライフラインを確保することの重要さを、あの大震災が教えているのです」とはどんな意味か。


 (3)実は私は携帯(けいたい)電話を持ったことがない(正確にいうとわたし名義(めいぎ)(注1)の携帯電話はあるが、それは娘がもているので、娘に急用があるときに自宅の電話から呼び出すだけだ。)小説書きにとって、携帯電話なんてもっていたら自殺行為である。だからもたないのだが、娘が買ってきたとき、彼女は付随(ふずいl)(注2)てきた①マニュアルの厚さに驚いていた。つまり携帯電話というのは単なる電話機能だけではなくて、いろいろなことができるらしいのである。
 なるほどTVのコマーシャルなどをみると携帯電話の画面でゲームに夢中になった娘さんが、ビールを注ぎこぼしてしまう、というのがあった。電話機でゲームなんか、どうやってやらなければならいんだろう。そんな厚いマニュアルがついている携帯電話に、どうしてさらに世界最小のデジカメ(注3)で写した写真を送る機能を付加しなくてはならないのだろう?みんなが事件現場の新聞記者というわけではないのに。
 同じ小型カメラといっても、あまりロマンチックじゃない気がするが、今の若い世代にはこれが十分ロマンチックなのかもしれない。②そういうことを否定する気はない。

(三木卓「もう間に合っています!『母のキャラメル’01版ベストエッセイ集』」)

(注1)名義:その人の名前(所有しているものなど)
(注2)付随する:それについているもの(注3)デジカメ:デジタルカメラ

(66)「①マニュアルの厚さ」はどんなことを意味していると筆者は言えるか。


(67)筆者が携帯電話について持っている疑問はどんなことか。


(68)「②そういうこと」とは何を指しているか。


 ハトを使って絵画を見わける実験をおこなってみよう。実験では10枚のピカソの絵と10枚のモネの絵をつかった。ハトは訓練用の小さな実験箱に入れられる。実験箱にはスクリーンがあり、スライド・プロジェクターで絵が映しだされる。
 ピカソの絵が映されたときにスクリーンをつつけば餌があたえられ、モネの絵の時には餌がもらえない。また、別のハトは逆にモネの絵では餌をもらえ、ピカソの絵ではもらえないという訓練をうける。ハトはおよそ20日間程度の訓練でこの①区別ができるようになる。ハトはモネの絵とピカソの絵がわかるようになったのだろうか。これはハトがピカソとモネの区別ができるようになったからではなく、20枚の絵を丸暗記しておぼえただけのことかもしれない。実際ハトはこのくらいの数の意味のない図をまるごとおぼえる記憶力を持っている。しかし、ハトは訓練につかわなかった、初めて見る絵を見せられた場合でも、それがモネの絵であるかピカソの絵であるかを区別したのである。ハトは訓練のつかわれた特定の絵を丸暗記したのではなく、「ピカソ」の作品、「モネ」の作品という②作風の区別をおぼえたと考えられる。

(60)輸入される木材の6割以上は、どんなことに使われているか。


(61)ハトがどのようなことをした場合に、 ①「この区別ができる」と筆者は判断したのか。


(62)②「作風の区別をおぼえた」とあるが、どのようなことか。


 (2) 子供に食事のマナーを教えるときは、 “〇〇すべきである”“〇〇しなくではな らない” というように、自分の考え方を押し付けるのでは子供たちは納得しません。子供 たちは、「美しい食べ方をしていると、人から“すてきだ” とか“かっこいい” とか思われる」という経験を通して、美しいマナーの意味を納得するのです。
 それには、家庭や学校などの集団の中で、子供自身に自分のありようを意識させること です。そして、きれいで美しい食べ方ができたときには「きれいに食べられた ね」「かっこよく見えるよ」とほめてあげましょう。 子供はほめられたことで「またこのようにしてみよう」と思います。こうして
 (中略)美しいマナーが習慣となり、その場に応じた美しい自己のふるまいを身につけていくことができるのでしょう。 ところで、皆さんは食事のマナーが成立するには“他者との関係” が不可欠であることにお気づきでしょうか。 人は人前で食事をするとき、一人で食べるよりもそれなりに整った食べ方をしようとするものです。それは「自分をよく見せない、人からよく見られたい」という気持ちが根底にあるからです。だから食事のマナーを身につける必要性が自然に生ずるのです。
 一方、一人で食事をとるときは、食事のマナーを感ずることが少ないのではないでしょうか。近頃の家庭の多く見られる“子供の独食” は、子供に適切なマナーを身につけさせるという意味においても考慮すべき問題であるといえるのです。

(63)「自分のありようを意識させる」とあるが、どういうことか


(64)子供に食事のマナーを身につけさせるために筆者がすすめているのはどれか。


(65)子供が一人で食事をする「独食」について、筆者はどのように考えているか。


 私たちが物を食べたとき、その前と後で私たちの体重はどのように変化するのだろうか。例えば、いま100gのくだものを食べたとして、体重は何グラムふえるだろうか。答えは100gである。あたり前じゃないかと怒ってはいけない。それは食べたすぐ後の話なのだ。では、食べてから時間がたったらどうなるだろうか。
 今から380年ほど前、あるイタリアの学者が、食べ物の重さと体重の関係を知るために、自分の体を使って体重の変化をこまかく調べた。まず、人間が乗ることのできる大きなはかりを特別に作り、その上に何日間もすわりつづけて、①食べたり飲んだり、大便や小便をしたりした。そして、そのたびに体重の変化をていねいに計って調べたのである。
 最初、その学者が考えたのは、食べたり飲んだりした物の重さから、外に出した大便や小便の重さを単純に引き算した分だけ体重はふえるだろう、ということだった。ところが、実験をしてみた結果、A彼が考えていたほど体重はふえなかったのである。彼は実験に間違いがあったのかもしてないと思って何回もやりなおしてみたが、結果はやはり同じだった。彼は②困ってしまった。おそらく、食べ物や飲み物の一部は、何か目には見えない物となって体の外へ出て行ってしまったのだろう、結局、彼はそう考えた。そう、彼は③間違っていなかった。 
では、その目に見えない物となって出て行ったのは何か。一つは汗である。人間の体からは、たとえじっとしていても、一日に1kg近くの汗が外に出ていく。この汗のことについてイタリアの学者も考えていた。もう一つは息を吐くときに出る炭酸ガス、つまりCO2だ。これは彼の時代よりずっと後になって、あるイギリスの学者が調べたことだが、体重68kgの人は一日に約0.7kgの酸素(O2)を取り入れて約0.82kgCO2を出しているという。つまり、人間の体重は、呼吸をするだけで、一日に約0.12kgずつへっていくことになるわけである。
 大変な苦労をして実験をした学者も、残念ながら、このことにまでは気がつかなかった。そのころは、空気はただ空気とだけ考えられていて、O2やCO2などいろいろな気体からできているとは考えられていなかたからである。

(66)①「食べたり飲んだり、大便や小便をしたりした」とあるが、だれがそれをしたのか。


(67)②「困ってしまった」とあるが、なぜ困ってしまったのか。


(68)③「間違っていなかった」とあるが、何が間違っていなかったのか。


 (1)日本で長く暮らしていても外国人がなかなか慣れない生活習慣や言葉 の表現に出会うことがある。その一つが②「先日はどうも。」「この間はどう も。」という挨拶だ。日本人に会ったとき、「先日はどうも。」などと言われ ると「何のことかな。」と考えてしまう。そういえば食事をごちそうした ( 60 )と具体的に思い出せるときはまだいい。何も理由がないときはどう答えていいか分からなくなる。 普通は、最後に会ったときのことを思い出して「こちらこそ。」「こちらこそ楽しかったですね。」「また、ご一緒しましょう。」などと答える。挨拶だけだった人の場合は「あの時はお話できなくて残念でした。」という具 合だ。これが難しい。
 日本人は、最後に別れたときの続きのように話を始めるようだ。だか らプレゼントをもらったり、何かお世話になったりしていたら当然 「先日はどうもありがとうございます。」このように会話が始まる。外国人にはこれが なかなか言えないようだ。日本人は ①こんなとき、何も言われないとちょっ と残念な気持ちになるらしい。これは習慣の問題だからいいとか悪いとか言えないが、外国人にとっ てやっかいな問題であることには違いない。

(60)( )の中に適当な語句を入れなさい。


(61) 第 3 段落目の①「こんなとき」はどんなときですか。


(62)②「先日はどうも。」についてどう言っていますか。


 (2)一枚の四角い布で、細長い瓶や大きいすいかなど、どんな形のものでも包むことができる。使わないときは小さくたたんで簡単に持ち運びできる。それが日本で昔から使われてきた「風呂敷(ふろしき)」だ。 日本の風呂敷は外国へのお土産として喜ばれ、海外では壁に飾ったりテーブルの上に()いたりして使用されているようだ。
 紙やビニールの袋と違って何度でも使えるので、ゴミを減らし再使用 にぴったりの品物だ。風呂敷を広めるために最近、包み方を教える会がたびた び開かれている。その際、従来にない使用方法を紹介することで、風呂敷が便に魅力(みりょく)あるものに変わってきている。
 例えば風呂敷で作るリュックサック。必要な物は 2 枚の風呂敷だけ。1 枚は最初に三角にたたんでから 4 分の 1 の(はば)に折って(ひも)を作る。もう 1 枚は 半分に折って三角形を作る。三角形の山の部分と先ほど作った紐の中心を結ぶ。紐の(はし)を三角形のそれぞれの残りの端と結ぶとできあがる。ちょっとすてきなリュックサックが簡単にできる。

(63)「風呂敷」の説明はどれですか。


(64)「風呂敷」のどんなところが良いと言っていますか。


(65)本文の内容と違うのはどれですか。


 (3)バラの花は世界中に25万5千種類もあって、色も赤白横色ピンクなどいろいろあるそうだ。長い年月(注1)品種改良(ひんしゅかいりょう)を続けた結果である。ところがどうしても作ることができないバラがあった。それが青いバラだった。多くの研究家が夢を求めていろいろ研究してきたが、青に似ていても青とは言いがたいバラしかできなかった。花の中に青い色を作り出す元がなかったのだ。その本物の青いバラが最新の(注2)遺伝子組換(いでんしくみか)え技術を使用することで初めて完成した。日本とオーストラリアの会社が14年も協力し続けて不可能を可能にしたのだ。これはただ青いバラが誕生したという以上の意味を持っている。青い色の元を使用すれば、もっと様々な色のバラができる可能性があるからだ。数年後には店で販売される予定の今最も期待されているバラである。

(注1)品種改良(ひんしゅかいりょう):目的の種類の植物を作るために親を選んで子を作ること
(注2)遺伝子組換(いでんしくみか)え:親から子へ伝えられる性質などを決める要素(ようそ)の組み合わせを入れ換えてしまうこと

(66)バラの色についての説明と違うのはどれですか。


(67)どうやって青いバラを作りましたか。


(68)なぜ最も期待されているのですか。


(1)① 会話の技術は、運転技術とよく似ています。ボーッと運転をしている と、事故を起こしかねません。たとえば、数人で楽しく盛り上がっているときに、 いきなり入ってきて、自分の話を始める人がいます。あれは、高速道路に加速しないで進入してくる車のようなもので、本人は気づかなくても、入った途端 にクラッシュ(注1)して入るのです。
 グループに加わりたいときは、まず黙って話を聞くことです。②うなずきながらエンジンを温かめ、ほかの車と速度を同じくして会話加わると、流れに うまく乗ることができます。
 そのうえで、自分の話ばかりしないように注意すること。人は誰でも、自 分の話をしたがっているのですから。会話は、ボールゲームのようなものです。サッカーでもバスケットボールでも、ひとりでボールを独占していたら、次か らは遊んでもらえなくなります。
 みんなで話しているとき、自分がどれだけ話をしたのが、常に意識していることも必要です。特に、大勢で話しているときは、発言しない人により多く の意識を配って下さい。おとなしい人は無視されがちですが、同じ場にいるこ とに敬意を払って、その人にも(注2)話を振らないと思います。
 つくづく思いますけれど、会話ほど、個人のレベル差が大きいものはあり ません。充実した会話をしたいのであれば、それなりの準備や練習は必要なの です。私は練習することで得るものは大きいと思いますよ。その中に、人生を 変える出会いや幸運が(注3)潜んでいるのではないでしょうか。
( 注1)クラッシュする:衝突事故を起こす
( 注2)話を振る:話す機会を与える
( 注3)潜んでいる:隠れている

(60)① 会話の技術は、運転技術とよく似ていますとあるが、この文章ではどんなところが似ていると述べているか。


(61) ②うなずきながらエンジンを温かめとあるが、ここではどういうことか。


(62)みんなで会話をしているときには、どのような注意が必要だと述べているか。


 (2)2000 年から 2001 年にかけて、全国紙として有名な新聞が、基本の活字を 少し大きなものに変えました。地方紙も同じだったと思います。高年者人口が原因でしょうが、新聞を読む人の総数の中で、(注1)老眼鏡を必要とする人 の割合が増えたからです。
 新聞だって「お客様は神様」でしょうから、その「神様」のニーズに沿って 紙面を変えるということは、とうぜんのことです。その案内の記事では、これまでの活字と新しい活字を比較して、いかに見やすくなったかがしめされていて、わかりやすく納得できるものでした。そして、各社ほとんど同じことを書 いていたと思いますが、紙面の大きさは変えないわけだから、「文字が大きく なった分、文字数を減らさねばなりません。そこで、記事は(注2)要点をお さえ簡略化して適切化をはかる(注3)」というような説明になっていました。なるほ どと思う一方、①これまではそうでなかったのかなとも思いました。
 大きな活字の本も出回るようになってきました。とくに辞書は同じ内容で 同じデザイン大きな(注4)版のものが出て、老眼鏡なしでも利用できるとあ りがたがられています。ただサイズが大きくなった分、大きく重いという欠点 もありませが、その快適さに換えられないという人には②問題になりません
( 注1)老眼鏡:年を取って近くが見えにくくなった人のための眼鏡
( 注2)要点をおさえる:要点をつかむ
( 注3)適切化をはかる:適切になるようにする
( 注4)版:ここでは、サイズ

(63)新聞の文字が大きくなった理由は何か。


(64)①これまではそうでなかったとは、どういう意味か。


(65)②問題になりませんとあるが、何か問題にならないのか。


 (3)転職を考えることが時々ある。とはいっても、①それほど本気ではない。 ただ、もし別の仕事を選んでいたら、自分はどんな人生だったのかを想像してしまう。想像するだけでもけっこう楽しい。今の仕事に大きな不満はないが、 そうかといって格別面白いというわけでもない。もしこの仕事をしてみたら、 自分はもっと充実するのかも、とついつい考えてしまうのだ。
 まあ、隣の芝生はよく見えるといわれてしまえばそれまでだが、自分にピッタリの洋服がなかなかないように、誰しも(注1)自分だけの仕事を探して いるのだろう。洋服は試着できるが、仕事に関しては、試しにちょっと、とい うわけにはいかない。もっとも多少働いたとしても、仕事の本質はわからない だろうか。
 昔に比べれば、われわれの職業選択の幅ははるかに拡がっている。だけ ど....これが②自分の仕事だと胸を張って(注2)いえる人は意外と少な いのではないだろうか。
 才能があれば、と思う人がいるかもしれない。子供の頃に憧れていた野球 選手とか、大学時代に憧れた映画監督になっていたら、たしかに楽しいだろう。 でも、現在、私が思うのは、そんな憧れの世界ではない。たとえ平凡な才能で も、自分にピッタリの仕事を探せればよいと思っている。誰しも、自由な職業 選択における自分だけの“必然(注3)”を求めているのではないだろうか。
( 注1)誰しも:誰でも
( 注2)胸を頑張って:自信を持って
( 注3)必然:そうなって当然のこと

(66)①それほど本気ではない理由として、本文から考えられることはどれか。


(67)②自分の仕事とはどのような仕事か。


(68)この文章で筆者が言いたいことは何か。


 (1)お母さんがサッカーボール型のスポンジケーキを作り、「こうしたら、子供たちに 喜んで食べてもらえるんですよ」と言っているのを見ました。私は古い人間な のかもしれませんが、①喜んで食べてもらえる」という言葉に強い違和感(注1)を覚えたのです。・・・
 子供たちには別に食べてもらわなくてもいい。腹が空けば、彼らは食べる。だから、極端な(注2)ことを言うなら、一家で週に一度くらい「断食の日」を作ればいい。そうすれば、嫌でも彼らは食べることでしょう。そうすれば、親たちは食事を作る手間を一日だけですが、省けるし、ダイエットにもなります。
 なぜ、こんなことを言うかといえば、現代会社は食事をするということから、 ②多くのことを学ぶ機会を失いつつあると考えるからに他となりません。先日、ラジオを聴いていたら、これまた③おかしなことを学校に申し入れる母親の話が紹介されていました。
 学校給食で、「うちの子供に食事前に『いただきます』と言うのを止めさせてほしい」というのです。理由は、「給食費を払っているのだから」。この放送があったら、「いただきます」を言うべきかどうかをめぐり、聴取者(注3)の間で大論争が繰り広げられたとのことです。
 「食堂で、『いただきます』、そして、『ごちそうさま』と言ったら、隣のおばさんに『お金を払っているのだから、店がお客に感謝すべきだ』と言われた」という事例が紹介されていました。
 私などから見れば、「いただきます」をめぐり大論争が展開されること自体が驚き です。いつの間に多くの日本人は食事をすることへの感謝を忘れてしまったの でしょうか。
(注1) 違和感:他のものと比べて何かおかしいと感じる気持ち
(注2) 極端な:考えがかたよっていること
(注3) 聴取者:ラジオを聞いている人

(60)①についての説明として最も適当なものはどれか。


(61) ②「多くのことを学ぶ」とあるが、例えば何を学ぶのか。


(62)③「おかしなことを学校に申し入れる」とあるが、筆者はなぜおかしいと言うのか。


 (2)私たちは、普段どのような場面で議論をするでしょうか? 家庭内で夫婦が子供をどこの幼稚園に入れるかについて議論する、会社において上司と部下が部署の方針について議論する、友人同士で同窓会の企画(注1)について議論する・・・・など、日常生活では、あらゆる場面で議論が行われます。
 ただ、議論としていると、自説を主張することだけに注意がいきがちになり、「何のために議論をしているのか」を忘れてしまうことが往々にして(注2)あります。
 子供をどの幼稚園に入れるかについて議論しているときに、妻が、「何よ、あんたなんかあの子の面倒をぜんぜん見てないじゃないの!こういうときだけ偉そうに言わないで!」
  などと攻撃を始めると、夫のほうも、「何だと!誰のおかげでメシが食えてると思ってるんだ!」と応戦します。
 これでは、 ①本来のテーマを離れ、醜い争いになってしまいます。(中略)
 「子供をどこの幼稚園に入れるか」という議論の目的は、どこの幼稚園に入れたら教育上最も望ましいか、を決めることです。
 この一点にたどり着くために、夫は自分の意見が正しいと信じて議論をし、妻は自分の意見が子供のためになると思って議論をします。
 会社において、部署の方針を議論するときも、どのような方針を打ち出せばいい結果が出せるのかについて、お互いの頭脳を結集し、その「着地点」を目指すわけです。 ②友人同士の議論も同じです
(注1) 企画:会を行うための計画
(注2)往々にして:しばしばそうなるということ

(63)①「本来のテーマ」とあるが、何を指しているか。


(64)②友人同士の議論も同じですについて、何が同じだと言うのか。


(65)筆者は「議論」についてどのように考えているか。


(3)「デブデブッて言わないで。あれはあたしが一番太ってた頃の写真なの。確か 55 キロぐらいあったと思う。高校生のときは 38 キロだったから、予備校や美術学校に行っているうちに 15 キロ増えた計算になるわね。」
 計算になってないのはおいといて、 ①太った原因について聞いてみよう。
 「貧乏よ」
 「え、貧乏すると普通はやせるんじゃないの」
 「武蔵野美術大学に行ってた頃、アルバイトで居酒屋の皿洗いをしてたの。お金が無くていつもお腹を空かせて働いてた。その時思ったのは、どんなにひ もじくても(注1)客の乗り物だけは食べないようにしようってこと。残飯(注2)だけは食わねえぞってね」
 結果は見えているような気がするけれど、続きを聞いてみようか。
 「ところが、酔っぱらった客がツマミをたくさん注文して、それが手つかずで洗い場に戻って来やがったの」
 「ふんふん、そ れで?」
 「いや、食った食った。もうバクバク食べったざんす。ひとくち目は躊躇(注3)があったけど、カラアゲが食道を通り抜けた瞬間、あたしや②人間を捨てて野犬になりました。美味しくて悔しくてワケがわかんなくなって、一瞬目頭が熱くなった(注4)くらいなの。 ③それまでは残り物を見るたびに、身体が緊張してたんだけど、一気にラクになっちゃった
 なんだか犯罪者の心の葛藤(注5)を見るような感じであります。
 「栄養学的には偏った食生活だったけど、とにかく食べるものがあるってのはうれしかった。これで絵の勉強に専念できるってね」
(注 1):ひもじい:非常におなかがすいている
(注 2):残飯:食べ残した料理
(注 3):躊躇:迷って決められないこと
(注 4):目頭が熱くなる:感動してなみだが出る
(注 5):葛藤:心の中に反対の感情があって、どちらにするか迷って悩むこと

(66)①「太った原因」とあるが、どうして太ったというのか。


(67)②「人間を捨てて野犬になりました」とはどういう意味か。


(68)③それまでは残り物を見るたびに、身体が緊張してたんだけど、一気にラクになっちゃったについて、どういうことか。


 (1)私の初夢は、春から始まる一人暮らしのため、部屋の間取りをしている夢 でした。
 「机をこう置こう」とか「ベッドはこの向きにしよう」など、とても楽し そうにしていました。
 きっとこの夢は正夢に近いものになるはずです。なぜなら、私はこの春から東京の専門学校に行くことが決まっており、一人暮らしをする予定だからで す。
 実際に今、少しずつ一人暮らしに必要な家電(注1)などをそろえ始めて います。
 そんな一人暮らしに、楽しみと不安の両方の気持ちを抱えています。東京という大都会でのたった一人の生活なので、親元を始めて離れる私にとっては、 とても怖いことでもあります。でも、将来の夢をかなえるための学校へ行く、たくさんの人と出会える機会を得ることができたことは、とても幸せなことで す。この機会を①無駄にはしたくありません。不安は大きいですが、自分が成 長するための第一歩として、しっかり歩んでいきたいです。
 ②この機会を得るにあたって、たくさんのひとから支援(注2)があったことを忘れず、感謝の気持ちを持ち続けようと思います。 これから先どんな困難にも負けない強くて立派な大人になるために、大きな一歩を踏み出します。
(注1)家電:家庭用の電気製品
(注2)支援:手伝って助けること

(60)①「無駄にはしたくありません。」とあるが、無駄にするとはここではどういうことか。


(61)②「この機会」は何を指しているか。


(62)この文章は、筆者が何のために書いたものだと考えられるか。


 (2)米国において仕事するときに英語で話すのはしょうがないとしても、日本 にきている外国人が日本語を話さず、荒稼ぎしているのは、私は正直いって解せない(注1)ものを感じます。(中略)そういう外国人を、①自分の英語で助けてしまっていることは、とにかくくやしいのです。 私は、前の会社にいたときに、この自分の非合理なナショナリズムに従って②ささやかな意地悪をしました。同僚の川上さんと話して、本社から来た米国人を餌食にしました(注2)。彼が日本の顧客のところに一緒にいきたいと いうので連れていく機会を使ったのです。
 私達が顧客と話す日本語を、彼には一切通訳しませんでした。顧客の方は英語を話さないし、私の会社の本社のことなど眼中にないのですから、かわい そうな外国人は、二時間ほど、私達の議論のうず(注3)の中で、ぽかんとす わっていました。終わってからも彼が質問したことには答えましたが、一切こ っちからは解説しませんでした。ちょっと悪いことをしたかなとは思いました が。(中略)
 わざわざこんなことを書いているのは、私達が、英語を話すときに、「日 本語のできない人のために、こっちがわざわざ英語を話してやっているのだ」 という気持ちをどこかでもっておくことは、③当然だと考えるからです。この 考えは、ある種の正当な(注4)優越感(注5)といえないでしょうか。これ さえあれば、へたでも何でも、堂々と(注6)話すことができます。
(注 1)解せない:納得できない
(注 2)議論のうず:激しい議論のたとえ
(注3)餌食にする:ある目的の対象として被害を与える
(注 4)正当な:正しい
(注 5)優越感:自分の方が優れているという感情
(注 6)堂々と:恐れたり隠れたりすることなく

(63)①「自分の英語で助けてしまっている」とあるが、どういうことか。


(64)②「ささやかな意地悪をしました」とあるが、なぜそうしたのか。


(65)③「当然だと考える」とあるが、なぜそう考えるのか。


 (3)パリの店で仕事をしていたとき、①困ったのは、お客様に「寿司はできな いの?」
 「デザート(注1)はないの?」と聞かれたことでした。お寿司は、日本料理 とは修業(注2)が全然違うのですが、フランス人にとってみれば「日本レストランなのに寿司がないのはどうしてだー?」となるわけです。日本のイタリ アンレストランにピザがなくて叱られた時代もあったのでしょうが、② それと同じような感じでしょう。もちろんそれだけではなく、デザートのないレストランなんてヨーロッパにはあり得ませんから、寿司もデザートも一生懸命勉強 しました。その頃の努力は今とても役に立っています。世の中にムダな努力は 本当にないですね。
うちの店では、お椀の次は、「お凌ぎ」といって、小さなお寿司をお出します。
 一貫だったり二貫だったりしますが、軽くお寿司を味わっていただきます。 これはひと区切り(注3)の合図です。料理の最後は( A )で終わるのですが、 途中で一回お寿司をお出しして、ここでとりあえず一段落。ちょっとお腹を落 ち着かせてもらって、ここからまたお酒を飲みましょうという気分に持って行 きます。
(注1) デザート:食後に出される菓子や果物
(注2) 修業:技術を習って身につけること
(注3) ひと区切り:ひとまずの切れ目

(66)①「困ったのは」とあるが、どうして困ったというのか。


(67)②「それと同じような感じ」とあるが、「それ」とは何を指すか。


(68) ( A ) に入れるのに最も適当な語彙はどれか。


(1)①会話の技術は、運転技術とよく似ています。ボーッと運転をしていると、事故を起こしかねません。たとえば、数人で楽しく()り上がっているときに、いきなり入ってきて、自分の話を始める人がいます。あれは、高速道路に加速しないで進入してくる車のようなもので、本人は気づかなくても、入った途端にクラッシュ(注1)して入るのです。
 グループに加わりたいときは、まず()って話を聞くことです。②うなずきながらエンジンを温め、他の車と速度を同じくして会話に加わると、流れにうまく乗ることができます。
 そのうえで、自分の話ばかりしないように注意すること。人は誰でも、自分の話をしたがっているのですから。会話は、ボールゲームのようなものです。サッカーでもバスケットボールでも、ひとりでボールを独占していたら、次からは遊んでもらえなくなります。
 みんなで話しているとき、自分がどれだけ話をしたのか、常に意識していることも必要です。特に、大勢で話しているときは、発言しない人により多くの意識を配ってください。おとなしい人は無視されがちですが、同じ場にいることに敬意を払って、その人にも(注2)話を振らないと。
 つくづく思いますけれど、会話ほど、個人のレベル差が大きいものはありません。充実した会話をしたいのであれば、それなりの準備や練習は必要なのです。私は練習することで得るものは大きいと思いますよ。その中に、人生を変える出会いや幸運が(注3)(ひそ)でいるのではないでしょうか。

(斎藤孝「できる人」の極意!による)

(注1)クラッシュする:衝突事故を起こす
(注2)話を振る:話す機会を与える
(注3)潜んでいる:隠れている

(60)①会話の技術は、運転技術とよく似ていますとあるが、この文章ではどんなところが似ていると述べているか。


(61)②うなずきながらエンジンを温めとあるが、ここではどういうことか。


(62)みんなで会話をしているときには、どのような注意が必要だと述べているか。


(2)2000年から2001年にかけて、全国紙として有名な新聞が、基本の活字を少し大きなものに変えました。地方紙も同じだったと思います。高齢者人口の増加が原因でしょうが、新聞を読む人の総数の中で、老眼鏡ろうがんきょう)(注1)を必要とする人の割合が増えたからです。
 新聞だって「お客様は神様」でしょうから、その「神様」のニーズに沿って紙面を変えるということは、とうぜんのことです。その案内の記事では、これまでの活字と新しい活字を比較して、いかに見やすくなったかがしめされていて、わかりやすく納得できるものでした。そして、各社ほとんど同じことを書いていたと思いますが、紙面の大きさは変えないわけだから、「文字が大きくなった分、文字数を減らさねばなりません。そこで、記事は要点をおさえ(注2)簡略化して適切化をはかる」というような説明になっていました。なるほどと思う一方、①これまではそうでなかったのかなとも思いました。
 大きな活字の本も出まわるようになってきました。とくに辞書は同じ内容で同じデザインで大きな版(注4)のものが出て、老眼鏡なしでも利用できるとありがたがられています。ただサイズが大きくなった分、大きく重いという欠点もありますが、その快適さに換えられないという人には②問題になりません

(光野有次『みんなでつくるバリアフリー』による)

(注1)老眼鏡ろうがんきょう):年をとって近くが見えにくくなった人のための眼鏡
(注2)要点をおさえる:要点をつかむ
(注3)適切化をはかる:適切になるようにする
(注4)はん版:ここでは、サイズ

(63)新聞の文字が大きくなった理由は何か。


(64)①これまではそうでなかったとは、どういう意味か。


(65)②問題になりませんとあるが、何が問題にならないのか。