短文
 冬の夜はいつも、ポケットに手を突っ込んで鼻を赤くしながら、難しいことをいっぱい話して歩いている気がする。しかしあんまり寒すぎると思考が停止し、もう笑うしかなくなってくる。だだっ広いコンクリートの広場で、なんだ①これは、殺す気か、なんてぎゃあぎゃあ騒ぎながら恋人と走り回っていた記憶がある。どこか暖かい場所に避難したりせずに私たちはただ走り回っていて、それがとても楽しかった。

(角田光代『愛してるなんていうわけないだろ』中央公論新社より)


問1 ①これは何を指しているか。

短文
冬の夜はいつも、ポケットに手を突っ込んで鼻を赤くしながら、難しいことをいっぱい話して歩いている気がする。しかしあんまり寒すぎると思考が停止し、もう笑うしかなくなってくる。だだっ広いコンクリートの広場で、なんだこれは、殺す気か、なんてぎゃあぎゃあ騒ぎながら恋人と走り回っていた記憶がある。どこか暖かい場所に避難したりせずに私たちはただ走り回っていて、②それがとても楽しかった。

(角田光代『愛してるなんていうわけないだろ』中央公論新社より)

問2 ②それは何を指しているか。

短文
思い返せほ十年ほど前、勤務していた病院で「医局長」から「ヒラの医者」(注1)に降格(注2)になったことがあった。とくに落ち度(注3)があったわけでもなかったので、同僚の中には「経営者に抗議すべきだ」「そんな扱いを受けてまで勤め続けることはないのでは」などと助言してくれる人もいたが、私としては何かアクション(注4)を起こす気にもなれず、そのまま勤務を続けた。降格になっても、“パン代”としては十分な金額が支払われていたので、①それ以上、望むことはなかったのだ。

(香山リカ『しがみつかない生き方』幻冬舍より)


(注1〕ヒラ:平。組織の中^で特に役のない身分。
(注2 〕降格:会社など、組織の中で地位が下げられること。
(注3 〕落ち度:注意が不足:したり怠けたりして起きた失敗。
(注4 〕アクション:行動。

問3①それは何を指しているか。

短文
 これからの正社員としての必須(注1)条件を端的(注2)にいえば、リーダーシップがあるということだろう。新入社員であっても、仕事において何らかの貴任を負い、社内外の人に動いてもらわなけれ坪ならない。そこがアルバイトと違う点だ。若者には、まずの①この点をわからせる必要がある。
 ところが、もともと「自分にリーダーシップがある」と感じている人はほとんどいない。まして最近の若者は、人の上に立ったり、率先(注3)して人を動かしたりすることを好まない。およそリーダーシップを感じさせない世代なのである。
 では、永遠にリーダーになれないかといえば、そうでもない。後天的に磨かれていくからだ。例えば、サッカー日本代表のキャプテンを務める長谷部誠は②その典型だろう。今でこそリーダーとして高い評価を受けているが、高校時代まではキャプテンどころか練習をさぼることもある選手だったという。その後、さまざまなチームで経験を積むうちに、リーダーシップを身につけていったのだろう。

(『若者の取扱説明書』PHP研究所より)


(注1)必須:必ずなくてはならないもの。必要なものの中でも最も必要なもの。
(注2)端的に:要点だけをはっきりと。
(注3)率先して:人の先に立って、自分から進んで。
(注4)後天的に:生まれつきでなく、育っていく間に。

問4 ①この点とは何を指しているか。

短文
 これからの正社員としての必須(注1)条件を端的(注2)にいえば、リーダーシップがあるということだろう。新入社員であっても、仕事において何らかの貴任を負い、社内外の人に動いてもらわなけれ坪ならない。そこがアルバイトと違う点だ。若者には、まずの①この点をわからせる必要がある。
 ところが、もともと「自分にリーダーシップがある」と感じている人はほとんどいない。まして最近の若者は、人の上に立ったり、率先(注3)して人を動かしたりすることを好まない。およそリーダーシップを感じさせない世代なのである。
 では、永遠にリーダーになれないかといえば、そうでもない。後天的に磨かれていくからだ。例えば、サッカー日本代表のキャプテンを務める長谷部誠は②その典型だろう。今でこそリーダーとして高い評価を受けているが、高校時代まではキャプテンどころか練習をさぼることもある選手だったという。その後、さまざまなチームで経験を積むうちに、リーダーシップを身につけていったのだろう。

(『若者の取扱説明書』PHP研究所より)


(注1)必須:必ずなくてはならないもの。必要なものの中でも最も必要なもの。
(注2)端的に:要点だけをはっきりと。
(注3)率先して:人の先に立って、自分から進んで。
(注4)後天的に:生まれつきでなく、育っていく間に。

問5 ②そのとは何を指しているか。

短文
 私は今までコンピューターゲームには興味がなく、テレビからしょっちゅうゲームのコマーシャルが流れてきても、私にとっては「わけがわからないもの」にほかならず、興味がわくことはなかった。だから、大人でもゲームに夢中になって睡眠不足になり.、朝起きられないという話は知っていたが、自分とは関係ないことだと思っていた。
ところが、①こんな私が友だちに単純なコンピュータゲームを紹介されて以来、ゲームにはまってしまい、慢性(注)的な睡眠不足になってしまったのだ。
(注)慢性:よくない状態が長く続くこと。

問6  ①こんなは何を指しているか。

短文
 10年前の3月のある日、私は仕事の休みをとってシンガポールに来ていた。当時好きだった中国人歌手がコンサートをするというので、いつもは一緒に行動することが多いファン仲間がみんな行けないという中、思い切って一人で来たのだった。
 シンガポールは暑く、日中は35度を摩えていて、15度の日本との温度差に体調が悪くなってしまった。ホテルで寝ていたかったのだが、肝心(注1)のコンサートのチケットがまだ手に入っていなかったため、暑さの中をプレイガイド(注2)を探しに出かけた。
 チケットは買えたのでよかったのだが、もし買えなかったら、私はどうするつもりだったのだろう。今では考えられないことだが、その頃の私は①それほどその歌手が好きだったのだ。
(注1)肝心:特に大切であること。
(注2)プレイガイド:コンサートなどのチケットを売る店。
それほど

問7 ①それほどは何を指しているか。

短文
 ①それは突然始まった。
 麻疹みたいに突然だった。頭痛みたいに激しくなったり軽くなったりした。そして慢性の糖尿病みたいにずうっと続いた。
 そんなふうにして、17歳の私は人嫌いになってしまったのだった。
 原因はとてもあやふやで、あるようなないような、②それすらも分からなかった。しかしそのときは原因なんてどうでもよかった。
 それまで毎日毎日楽しかった日々が、急に灰色眼鏡の尚こう側になってしまい、大好きだった友達たちが突然嫌な人間に見えてきて、私はただ呆然と困っていた。今までと同じように、面白かったTVの話や食べ物の話や好きなスターの話がたまらなくつまらない。みんないったい何を考えているのだろう。それから、友達の根本がまるで見えなくなって、みんなが嫌なことを思っているように感じた。私は少しおとなしくなった。それまで馬鹿みたいにはしゃいでいたが、急に無口になった。

(角田光代『愛してるなんていうわけないだろ』中央公論新社より)


(注1)麻疹:ウイルスによる病気の一つで、高熱が出て、皮ふに赤い点がたくさんできる。
(注2)慢性:よくない状態が長く続くこと。
(注3)糖尿病:血液中の「血糖」が異常に多くなる慢性の病気。
(注4)呆然と:力が抜けてしまい、ぼんやりと。
(注5)はしゃいで:調子にのって陽気に騒いで。

問8 ①それ何を指しているか。

短文
 ①それは突然始まった。
 麻疹みたいに突然だった。頭痛みたいに激しくなったり軽くなったりした。そして慢性の糖尿病みたいにずうっと続いた。
 そんなふうにして、17歳の私は人嫌いになってしまったのだった。
 原因はとてもあやふやで、あるようなないような、②それすらも分からなかった。しかしそのときは原因なんてどうでもよかった。
 それまで毎日毎日楽しかった日々が、急に灰色眼鏡の尚こう側になってしまい、大好きだった友達たちが突然嫌な人間に見えてきて、私はただ呆然と困っていた。今までと同じように、面白かったTVの話や食べ物の話や好きなスターの話がたまらなくつまらない。みんないったい何を考えているのだろう。それから、友達の根本がまるで見えなくなって、みんなが嫌なことを思っているように感じた。私は少しおとなしくなった。それまで馬鹿みたいにはしゃいでいたが、急に無口になった。

(角田光代『愛してるなんていうわけないだろ』中央公論新社より)


(注1)麻疹:ウイルスによる病気の一つで、高熱が出て、皮ふに赤い点がたくさんできる。
(注2)慢性:よくない状態が長く続くこと。
(注3)糖尿病:血液中の「血糖」が異常に多くなる慢性の病気。
(注4)呆然と:力が抜けてしまい、ぼんやりと。
(注5)はしゃいで:調子にのって陽気に騒いで。

問9 ②それは何を指しているか。