思い返せほ十年ほど前、勤務していた病院で「医局長」から「ヒラの医者」
(注1)に降格
(注2)になったことがあった。とくに落ち度
(注3)があったわけでもなかったので、同僚の中には「経営者に抗議すべきだ」「そんな扱いを受けてまで勤め続けることはないのでは」などと助言してくれる人もいたが、私としては何かアクション
(注4)を起こす気にもなれず、そのまま勤務を続けた。降格になっても、“パン代”としては十分な金額が支払われていたので、①
それ以上、望むことはなかったのだ。
(香山リカ『しがみつかない生き方』幻冬舍より)
(注1〕ヒラ:平。組織の中^で特に役のない身分。
(注2 〕降格:会社など、組織の中で地位が下げられること。
(注3 〕落ち度:注意が不足:したり怠けたりして起きた失敗。
(注4 〕アクション:行動。