冬の夜はいつも、ポケットに手を突っ込んで鼻を赤くしながら、難しいことをいっぱい話して歩いている気がする。しかしあんまり寒すぎると思考が停止し、もう笑うしかなくなってくる。だだっ広いコンクリートの広場で、なんだこれは、殺す気か、なんてぎゃあぎゃあ騒ぎながら恋人と走り回っていた記憶がある。どこか暖かい場所に避難したりせずに私たちはただ走り回っていて、②それがとても楽しかった。

(角田光代『愛してるなんていうわけないだろ』中央公論新社より)

1。 問2 ②それは何を指しているか。