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 時間に対比(注1)されるのは空間(注2)である。時間がた つというのは、いまが過ぎてゆくことだともいえる。いまがもとのいまでなく、別のいまになってゆくことである。いまは何もしないでじっとしていても移って ゆくようにみえる。しかしいまに対比されるここ、われわれの現にいる場所、にはこのようなことはない。いまわたしは机に向かって坐っているが、動こうとしなければいつまでも坐ったままでいられる。空間がわたしの手を引っぱって、わたしを違う場所に移すわけではない。しかしわたしはじっとしているのに、時間の方はどんどんたってゆく。これは実に不思議なことである

(中村秀古「時聞のパラドックス」による)


(注1)対比する:二つを比較する
(注2)空間:場所

1。 (58)これは実に不思議なことであるとあるが、筆者にとって何が不思議なのか。