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 よく知っている人が遠くに見えたとする。遠ければ遠いほど、その人は小さく見える。これはだれでもわかっていることである。が、もし、その人が五円玉(注1)の穴の中に収まる(注2)ほどにしか見えなくても、頭の中では身長をちゃんと思い浮かべているのである。五円玉の穴の中に収まるくらい小さくなってしまったとは思わないのである。小さく見えるということが距離を感じ、頭の中でもとの大きさにちかづけて解釈しているのである。人に限らず、道の幅にしても四角や丸の形にしても、それをどんな角度から見ていたとしても、元の大きさ、カタチを感じとるという習慣がついているのである。
 (中谷隆夫·古川日出夫·北山誠·水戸泉「美術のとびら」日本書籍による)
(注1)五円玉:五円の硬貨
(注2)収まる:入る

1。 (59)「五円玉の穴の中に収まるくらい小さくなってしまったとは思わない」とあるが、それはなぜか