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上智大教授(哲学)のアルフォンス・デーケンさんは毎年、一年生たちに人間学の講義をする。50人ほどの教室を見渡しながら先生は、講義中に決して笑わない学生のリスト(注1)を作っていく。先生だけの心覚えで、笑わないからといっ て落第点をつけるわけではないが。 「一年間に一度も笑わなかった学生のうちの何人かが、病気になったり、退学(注2)したり、自殺未遂(注3)をしたりします。」
笑わない学生というのは生真面目すぎて、いつも緊張しつづけている。それが肉体と精神両面の衛生によくないことを、リ ストは立証(注4)してみせている。 「ですから私は、( )、というのです」
(上前淳一郎「読むクスリ14」文芸春秋による)
(注1)リスト:名前を書いた表
(注2)退学:途中でがっごうをやめること
(注3)自殺未遂:自殺をしようと したこと
(注4)立証:証明すること