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最近、イギリス風の庭づくりを参考に、狭い庭でも、またベランダでも楽しめる花作りが盛んになっています。
空前(注1)のガーデニングブームなどと言う人もいますが、日本人の花好き①今に始まったことではありません。昔から日本人は部屋に花を飾って楽しむ生け花だけでなく、庭に、そしてちょっとしたスペースにも花を育てていました。江戸の園芸技術は世界最高だ②と幕末(注2)に来日した西洋人が驚嘆したという話があるくらいです。当時の江戸では菊など自慢の花を持ち寄る品評会(注3)や鉢植え(注4)の市がしょっちゅう開かれ、社交としての園芸文化が育っていました。また、菊の花を使って歴史的な人物などの衣装を飾る菊人形などは、見世物(注5)としても人気があったようです。富裕層(注6)だけでなく、一般庶民にも園芸は根付いていたのです。人口100万の世界でも最大の都市だったこのころの江戸は、いろいろな独自の文化を生み出し育ててきました。物質的には貧しくても、精神的にはなかなか豊かな時代だったようです。
(注1) 空前:以前には例がない
(注2) 幕末:江戸幕府の末期、普通1853年以降をいう
(注3)品評会:作品や作物の優劣を論じ合う会
(注4) 鉢植え:草木を植木鉢に植えたもの
(注5) 見世物:珍しいものや芸などを料金をとって見せる興行
(注6)富裕層:財産があり豊かな階層