最近、働こうとしない若者が増えているという。また、就職しても「仕事に興味が持てない」「厳しくされるのはいやだ」などの理由で、新入社員の3分の1が3年以内に会社を辞めてしまうのだそうだ。「子どもの興味のあることを伸ばし、個性を尊重する」といういわゆるゆとり教育が「興味のあることしかしない」「我慢ができない」若者を生んだ大きな原因の一つであるということだ。この話を聞いて、数年前に読んだこんな記事が頭に浮かんだ。
「縁側」という喫茶店がある。隣近所の人との接点になる縁側のような場所にしたい。そんな願いを込めて付けられた店名だ。引きこもりやニートの若者を支援しているNPO法人が運営している。引きこもる青年たちの仕事体験の場でもある。
そこに集まる青年たちは、まじめな優等生タイプが多い。その中に大学で心理学を専攻した①若者がいた。カウンセラーを目指して卒業後も勉強を続けたが、現実は甘くはなかった。それでも、「自分は特別」という思いがあり、社会に出て②普通の仕事につく気持ちにはなれなかったらしい。引きこもりの生活を何年か続け、昨年、このNPO法人を訪れた。そして、他の引きこもりの若者たちと寮で共同生活を続け、様々な仕事体験を重ねるうちに、「平凡なことの積み重ねこそ大事」、そう思えるようになったという。
「個性を尊重する」ことは大切だ。しかし、「個性的でなければ生きている意味がない」という思い込みが若者を追い詰めているとは言えないだろうか。平凡な仕事を自分には合わないと思っても我慢して続けてみる。興味がないことであっても、すぐ投げ出さない。何か失敗しても、それを自分を向上させるバネにすればいい。そうすれば、だんだん仕事の面白さが分かってくるのではないだろうか。教育の場では、社会性を養うことも大切だ。社会というものは自分の思いどおりにはならないものだが、その中で少しでも自分らしい生き方ができるような力を育てるべきだ。個性というものは、そう簡単に発揮できるものではない。