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もう東京に長く住んでいるフランス人と話していたときのこと。「ヨーロッパの街は整然としていてきれいでいいですね」と言うと、「確かにきれいですけど、東京のような面白さはありませんよ」という返事だった。彼の住んでいるあたりは、大通りからちょっと入ると路地が迷路のように広がり、すぐ方向がわからなくなる。近代的な建物の横に、古いお宮やお寺があったりする。鉢植えの花が道にはみ出しておいてある。人々の生活のにおいがする。これがいいのだそうだ。彼は①こういう路地を歩き回るのが楽しいと言う。「あれ、こんな所にこんなものが・・・・」という不釣合いを発見しながら。
パリの裏道を歩いていると、石畳の道の両側にクラシックな石造りの建物が冷たく重々しくそそり立つ。きれいだが、何が出てくるかわからないというようなおもしろさはない。美しく整った街を見飽きた目には、ごちゃごちゃした所がかえって新鮮にうつるのだ。
この話は、海外からの観光客を誘致したいという政府には、いいヒントとなるだろう。②街はきれいにするだけが能じゃないのだ。