人間とは月のようなもの
この世を生き抜く上で知っておくべき言葉がある。
まず一つは、「人間は謎」だということ。
人は自分ではなんでもわかっているつもりでも、本当は自分自身のことをよく理解できていないものだ。 自分で自分のことを理解できていないのに、どうして他人のことを理解できるのか。これが、【41】一つ。
それからもう一つは「人間は月のような存在だ」ということ。自分が他人に見せている「自分」は、相手に 応じて見せる「光り輝いている部分」であって、ほかのところに行けば、また【42】顔をする。上司の前で は部下の顔をするし、お得意様(注1)の前に行けばそれなりの顔をする。自分だけじゃない、みんなが千変 万化する(注2)ものであり、人は他人に対して、基本的には常に自分の明るい部分を見せているということ だ。
他人には満月を見せていて、人という光に当たって誰もが輝いて見えているが、その裏側は黒く、暗いもの だ。その暗いものを自分が持っているということを最初からわかって【43 】、その人はもう、すぐにでも心 が平和になるだろう。
そうすれば、「あの人は信じられる」とか「信じられない」とか、「裏切られた」という思いもなくなる。人 間社会という宇宙の上に回っていて、その人間が裏側を見せている場合もあるのも仕方のないことで、人間関 係というのは‘引力’とかいろんなことが関係してくるということも【44 】。
だからこそ「人間は謎」であり、たまには元気がなくなったりして、三日月になったりするけど、いつも光 って見える。【45】裏側に、真っ暗で人に見せたくない部分を誰もが持っていて、そのすベての面を見るこ とは誰にもできない。
見えている部分の裏側にある面の存在を認識できていれば、変に気持ちが揺さぶられることもなくなるの だ。
(注1)お得意様:ここでは、取引先。
(注2)千変万化する:さまざまに変化する。