「旅」は、大きく二つに分けることができるでしょう。一つは「行かなければならない旅」で、もう一つは「行きたいから行く旅」です。会社で出張に行くなどの仕事の旅は前者ということになりますし、観光の旅は後者と考えられます。また、前者を「(50-a)」、後者を「(50-b)」と言い換えることも可能でしょう。(51)、その二つが同時に行われることもあるでしよう。
日本の歴史を考えますと、古代から近世までの、およそ1000年にもわたる長い時間の流れの中では、旅の目的や手段が、一気に大きく変化することはありませんでした。旅をするには、お金がかかりますし、この間、日本の経済が大きく発展する(52)からです。
しかし、江戸時代が終わり、近代が始まりますと、まず旅の手段が(注)飛躍的に進化して多様になりました。さらに、現代に入ると、航空機の登場が日本人の旅を大きく変えることになりました。(53)、航空機により大量の輸送が可能になった時期は、日本の高度経済成長期と重なるため、それ以降、日本人の旅は「(50-a)」から「(50-b)」へ大きく傾いたと言えるでしょう。
そして現在、旅は、個人が「行きたい」と思えば、ほとんどはその希望がかなえられる段階に(54)。
(注)飛躍的:進歩、向上などが急激な様子