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 最近、東京都内には、地方自治体(県・市・町・村)のアンテナショップが多く見られるようになり、ちょっとした話題になっている。
 「アンテナショップ」とは、企業が新製品の売れ行きを見たり、自社製品を紹介したりするために東京の銀座など人が集まる所に作る店のことだが、地方自治体のアンテナショップもまた、それぞれの地域のことをたくさんの人に知ってもらおうという目的で作られている。
 ①このような施設は、実は10年以上前からあった。しかし、当時は、〇〇県東京事務所、〇〇県観光案内所というような名前だった。そこでは、観光案内や特産品の展示、地元の就職先の紹介などを行っていたが、店の様子は、いかにも「お役所的な」ものだった。
 だが、②最近のアンテナショップは違う。明るい店内には、きれいな観光写真が貼られ、地元で生産した食品や工芸品が並ぶ。特に食品類が人気で、地元の名産品やお菓子はよく売れている。飲食コーナーやレストランを併設しているショップもある。そこで提供されるのは、もちろん地元の名物料理。「地元直送(注1)の食材を使った本場の味」が人気で、食事だけを目的に来店する人もいるほどだ。
 南北に細長い国土を持つ日本は、地方ごとに独特の食文化がある。このような、地方の食文化への関心を背景に、自治体は、東京にアンテナショップを開店しているのだ。
 都会の消費者からみれば、アンテナショップは、手軽に地方の名産品が手に入り、旅行気分が味わえる、楽しく便利な場所と言える。都会の人が地方の文化を楽しむことができて、それで地方の商店が儲かれば、一石ニ鳥(注2)。アンテナショップがうまく機能していくことを期待しよう。

(創作集団にほん’ご鎘「アンテナショップで地方の食を楽しむ」
『中上級のにほんご』2009年9月号一部改)


(注1)地元直送:地元から直接送られること
(注2)一石ニ為:一つのことをして二つの利益を得ること

1。 (66)①「このような施設」が、指すものはどれか。

2。 (67)②「最近のアンテナショップ」の説明として、正しいものはどれか。

3。 (68)この文章で筆者が言いたいことはどれか。