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 我々は生まれたとたんに身につけることばがある。それは多くの場合、両親のことばであり、祖父祖母、兄姉など肉親のことばであり、生まれたばかりのその人間を取りまく(注)周囲の人達のことばである。①これは標準語ではない。人間が生まれて初めて耳にし、覚える自然なことばは方言なのである。それが次第に成長し、広く社会に出ていくにつれて、自分の属する環境の中での共通語を身につけはじめる。「女ことば」「男ことば」の名で呼ばれる女性共通語、男性共通語。あるいは遊び仲間での共通語、「若者ことば」と呼ばれる若い年代層の間での年齢共通語、そして職業を同じくする者の中での職業共通語。
 つまり人間は、自分が生まれ育った環境の中で体得した最も狭い意味での家族方言、地域方言、環境方言に囲まれて成長し、次第に広がる生活環境の変化の中で、その状況に応じたきまぎまな共通語を身につけるようになる。しかし、ここまでのことばは、ある限られた領域の中でしか通用しないという意味では、すべて方言である。

(水原明人【江戸落・東京語・標準語」講談社現代新書による)


(注)取りまく:まわりを明む

1。 (63)筆者はどうして、①これは標準語ではないと言っているのか。

2。 (64)筆者の言う「方言」に入らないものはどれか。

3。 (65)筆者の考えと合っているものはどれか。