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食事の作法は、世界各国で違うから私には大変おもしろく思える。
時々、日本以外の国のホテルで、サラダのお皿などを持ち上げて食べている日本人を見かける。あれは外国の習慣に慣れないことを示してはいるのだが、日本では子供の時から、決してご飯をいれる茶碗や、スープを入れる本のお椀を、下においたままと食べてはいけない、としつけられているのである。ご飲茶碗を下においたまま食べようものなら、母は、「そういうだらしのない食べ方をしてはいけません」と叱る。
(三浦洒門・曽野綾子 『日本人の心と家』 読売新聞社による)