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 子どもとかかわる仕事場と言えをば、「学校」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。僕は教師として小学校や中学校などの現場で働いたことは一度もありませんが、これまでに多くの子どもたちにかかわって仕事をしてきました。勉強も教えてきましたし、スポーツなども一緒にやってきました。
 教師志望(注1)でもなかった僕が、こんなにも長く子どもにかかわる仕事をするようになるとは、①当時は夢にも思っていませんでした。そもそものきっかけは、アパートの一室を教室にして②塾を開設したことです。ただこれも自ら思い立ってではなく、勉強の苦手なわが子のことを悩んでいたお母さんたちが、近所に住む僕たちに「子どもたちに勉強を教えてもらえないか」と声をかけてきたのが始まりでした。
 その頃の僕は大学を卒業し、大学院に進んでいました。ちゃんとした仕事に就くまでのアルバイトのつもりで、友だち数人とこの仕事を引き受けたのです。
 それが子どもたちにかかわる最初の最初でした。それから今日まで、ずっと子どもたちとともにきましたが、なぜこの仕事を続けてきたのかを考えてみると結局、子どにかかわる仕事は、一度首をつっこむとそうそう抜けることができないくらい心躍る仕事だということ、同時に汲めども(注2)汲みきれない魅力がある。奥の深い世界でした。

(佐藤洋作「不登校の子どものためのもう一つの小きな学校」
子どもにかかわる仕事】岩波ジュニア新半による)


(注1)志望:こうなりたいと望むこと
(注2)汲めども汲めども:汲んでも汲んでも

1。 (66)①当時とは、いつか。

2。 (67) 筆者が②塾を開設した理由は、何か。

3。 (68) 筆者は、自分がしてきた「子どもとかかわる仕事」をどう考えているか。