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人間は成長するに従い、何度も皮をないて新しくなる。
この
脱皮をさせてくれる助けはいろいろあるが、本はその大きなキッカケの一つである。あなたがある本とめぐり合って、その中にある一つのコトバが、何か心にかかりながら、そのときは過ぎてしまう。何年かたってふと思い出し、「そうか、そういうことだったのか、ほんとだ、あの著者のいいたかったのは、こういうことなんだな」とわかる、そのとき、あなたは一つの脱皮をなしとげる。①
そういうことが何度もいろんな本でおこなわれると、その蓄積は次第に厚く深くなってゆくだろう。人生経験を積み重ね、それを裏打ちして自分にプラスしてゆくには、どうしても読書が必要になる。
とにかく言和をたくさん知ることが望ましい。私たちはコトバを使って考えを組立てる。②
積本の数は、なるべくたくさんでなければならない。さまざまな形のものも欲しい。本を読むことで、それらはいくつもできる気がする。口下手
(注1)でコトバをすぐ唇にのぼせられない(若いときはそういうことが多い)人も、あたまの中にコトバがひしめいている
(注2)。 それでよいのだ。
(田辺型子「読むことからの出発」 講読社現代新章による)
(注1) 口下手 : 話すことが苦手なこと
(注2) ひしめいている : すき間なく詰まっている