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同じ距離を電車に乗って通勤していても、電車に乗っている時間を、長いと感じる時と、「あれっ、もう着いたのか」と思うほど短く感じる時とがある。
では、その差はどこにあるのだろうか。一言で言うなら、「 」ではないか。雑誌や本を一生懸命になって読んでいたり、考えごとに没入
(注)しているような時には、時間はあっという間に過ぎてしまう。ところが、手持ち無沙汰で、何もすることもなく、考えることもないような時には、いつまでたっても、日的地に着かないような気がする。座っていても腰が痛くなってくる。
(秋庭道陸「ことばの切れ味】 講談社+文庫による)
(注)没入 : すっかり入りこちこと