(1)
イヌは飼い主が「こっちへおいで」と呼べば、たいていはちゃんとやってくるが、ネコは①
そんなことはない。いくら「おいで、おいで」といっても、ちょっとこっちを見るくらいが関の山
(注1)で、さっぱり寄ってこようとはしない。
ぼくの家にも5匹も6匹もネコがいたころ、春や秋の日曜日の昼には、庭の奥でバーベキューをすることがよくあった。するとまもなくネコたちはみんな家の中から出てきて、ぼくらのいる庭の隅にやってくる。けれどイヌのようにぼくらの足もとに寄ってくるわけではない。近くの物置の上や塀の上に、てんでに
(注2)すわりこんだり、寝そべって
(注3)ぼくらのほうを見ている。そして、②
とても満足そうな顔をしているのだ。
彼らは人間といっしょにというか、人間の近くにいたいのである。だからほくらが留守中のネコの世話を近所の知り合いに頼んで2日ばかり旅行に出かけようとしていると、非常に不安そうな様子になる。ぼくらの気配で何か察知して
(注4)いるとしか思えないのである。
(日効族「ネコはどうしてわがままか]法研による)
(注1)関の山:それ以上は無理という限界
(注2)てんでに:思い思いに
(注3)寝そべる:横になる
(注4)察知する:外にあらわれた様子から感じとる