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 日本人は、本質や人格が日に見える部分に表れるものだという感覚が強い。
 そのために、「私は男性を見るときに、まず傘と靴を見て判断する」などと言う人が出てくる。また、心理テストのようなもので社員の採用を決める会社もある。
 そういった語を「人を見る日があるな」などと感心して聞いているのは感心しない。私に言わせてもらえば、日常生活では誠実に制御している深層心理を暴き出して(注1)それを本質と見るなどというやり方はアンフェアだ。第一、持ち物や点数に頼るようでは、眼力がないことを露呈(注2)しているようなものだ。そうした偏った見方なり、安直な(注3)ペーパーテストなりをやめて、自分と相手との関わりから見るべきなのだ。

(斎藤着「眼カ」三移書房による)


(注1) 暴き出す : 隠しているものを探して出す
(注2) 露呈 : 隠れていたことを、わぎと表面に出すこと
(注3) 安直な : 安くて簡単な

1。 (59) 筆者は、「人を見る目」とはどのようなものだと考えているか。