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 大学当時、毎日のように入り浸っていた美術部の部宇には、いろんな静物が置いてあり、暇があればキャンバス(注1)に向かっていた。描いてみればわかることだがりんごの質感は、空腹であればやわらかく感じられるし、そうでもなければつるんとして陶器(注2)のようにも見える。つまり「あるがままに」描くということは、対象ではなくむしろ自分のこころの状態を、キャンバスの上に再構成することなのである。ということは要するに、私にとって絵を描くという行為は、「自分とは何か?」を解明する作業に他ならなかったわけである。

(石湿 減・池谷瑠絵「ロボットは涙を流すか】 PHP サイエンス・ ワールド新書による)


(注1) キャンバス : 絵を描くための布
(注2) 陶器 : 土を材料にした焼き物

1。 (58) 筆者にとって、「絵を描く」ことは、どんな意味があるのか。