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 まだ幼かった頃、近所の原っぱで紙しばいを見終えた後、夕ごはんに間に合うように走って帰った夕暮れの美しさは今も忘れない。あの頃、時間とか、自分をとりまく世界を、一体どんなふうに感じていたのだろう。一日が終わってゆく悲しみの中で、子どもながらに、自分も永遠には生きられないことを漠然と(注)知ったのかもしれない。それは子どもがもつ、本能的な、世界との最初の関わり方なのだろうか。

(星野道夫「『旅をする木」 文藝春秋による)

(注) 漠然と : ぼんやりと

1。 (56) それとは何を指しているか。