人間は誰でも本当は死と隣りあわせで生きている。自殺、などというものも、特別に異常なことではなく、手を伸ばせばすぐ届くところにある世界なのではあるまいか。ひょいと気軽に(注1)道路 白線をまたぐように、人は日常生活を投げ出す(注2)こともありえないことではない。ああ、もう面倒くさい、と、特別な理由もなく死に向かって歩みだす(注3)こともあるだろう。私たちはいつもすれすれの(注4)ところできわどく(注5)生きているのだ。
(注1) ひょいと気軽に: 何気なく簡単に
(注2) 投げ出す : あきらめて、やめてしまう
(注3) 歩み出す : 歩き出す
(注4) すれすれの : なんとか危険を避けて
(注5) きわどく : ぎりぎりの危ない状態で