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 この二、三十年の間に、日本人の考え方や行動は少しずつ変化してきた。
 まず、環境問題への関心が高くなった。それは、もしかすると私たちの社会は自滅(注1)への道を進んでいるのかもしれないという思いを社会に広めた。そればかりではなく、経済発展に対する迷いも生まれてきた。経済の力は必要かもしれないが、それだけでは社会の維持は保証できないし、私たちも幸せにはなれないのではないかという思いが、少しずつ広がっていった。
 もうひとつの大きな変化、それは個人の社会から、協力し合う社会へと、私たちの社会目標が変わってきたことである。強い個人の確立(注2)が良い社会を作るという以前の考え方に代わって、「共同性」、「支え合い」といった言葉が社会づくりのキーワード(注3)になってきた。
 そして、①これらの変化が、農村社会への関心を高め、同時にNPO(注4)やボランティア活動(注5)の時代をひらいていったのである。その結果、いまではどの地域に行っても、無理をせずに農山村で暮らす高齢者や、農業を志望する若い人々が見られるようになった。都市でも消費者と生産者をつなぐ活動が広がり、都市と農山村の新しい結びつきも生まれてきた。
 このようなさまざまな動きが、徐々に社会の価値観を変えていった。経済の発展や強い個人が豊かな社会をつくる、という発想では不十分だと考える確実な変化が、社会のなかに生まれてきたのである。

(内山節「時代を読む」2009年9月20日付け東京新聞朝刊による)


(注1)自滅:自分で自分に悪い結果を招くこと。自分の行動が原因で死ぬこと。
(注2)確立:しっかり打ち立てること。
(注3)キーワード:keyword重要な言葉。かぎになる言葉。
(注4)NPO:Nonproft Organizationお金をもうけることを目的としない法人。
(注5)ボランティア活動:volunteer社会のために自分から無料で行う活動。

1。 (62)①これらの変化とあるが、どのようなことか。

2。 (63)本文の内容とあっているものはどれか。