大人になってからもう三十年以上たちましたが、私は今でもあきずに、本を読み暮らしています。本を書くのが私の職業なので、毎日、せっせと読んだり書いたりしています。仕事のために必要な本を読むことも(50)が、どんな本でもちゃんと気を入れて読めばおもしろいものです。本を読むのは、だれかの頭や心の中を(51)ことと同じですから、作者の人柄や考え方にふれる喜びが、私の場合には読書の楽しみのかなりの部分を占めています。
 (52)、私は一冊好きな本に出会うと、親友を一人得たような気分になります。そして、またそういう親友のような本がふえる(53)、人を好きになる力や、人に好かれる力が少しずつ私の中にたまってゆくような、そんな気分にもなります。
 ところで、自分で本を書くようになって分かったことですが、文章を(54)、どうしても誠実さが必要になります。まじめに一生懸命書かないと、文章というものはなかなか書けません。ですから、本を書くのは、ある意味で好きな人に手紙を書くのとよく似ていると言うことができると思います。

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