考え事をしていて、うまく⾏かないときに、くよくよしているのがいちばんよくない。だんだん⾃信を失って⾏く。論⽂や難しい原稿を書いている⼈にしても、書斎にこもりっ切り(注1)で勉強をしているタイプと、ちょいちょいたいした⽤もないのに⼈に会うタイプとがある。
 ちょっと考えると籠城(注2)している⼈の⽅がいい論⽂を書きそうであるが、実際は①⼈とよく合っている⼈の⽅が、すぐれたものを書くようだ。仲間と話をする。みんな、ダメだ、ダメだ、と半ば⼝ぐせのように⾔っている。それを聞くだ⾃分だけ苦労しているのではない。まだ、ましな⽅かもしれないという気持ちになる。間接的にほめられているようなものだ。帰ると意欲がわくということになる。ひとりでよくよするのは避けなくてはいけない。⼈と話すのなら、ほめてくれる⼈と会うようにする。批評は するど 鋭いが、よいところを⾒る⽬のない⼈は敬遠する。
 ⾒え透いたお世辞のようなことばを聞いてどうする。真実に直⾯せよ。そういう勇ましいことを⾔う⼈もあるが、②それは超⼈的な勇者である。平凡な⼈間は、⾒え透いたことばでも褒められれば、⼒づけられる。お世辞だと分かっていても、いい気持になる。それが⼈情なのではないかろうか。
(注1)こもりっ切り:ずっと中にいて外出しようとしないこと
(注2)籠城:こもりっ切りとほぼ同じ意味

1。 (65)①「⼈とよく合っている⼈の⽅が、すぐれたものを書くようだ」のはなぜか。

2。 (66)②「それは超⼈的な勇者である」とあるが、「超⼈的な勇者」とはどのような⼈か。