「少しは体にいいことをしなくてはJと、心悩ませる人が手軽にできることの一つに「野菜ジュースを飲む」があります。あなたは野菜不足だ、もっと食べなさい、と常に「強迫(注1)」されているような人にとって、野菜ジュースを飲むことは手っ取り早く「いいことをした」気分になれる飲料のようです。その利用を見込んで(注2)飲料の売り場にはたくさんの種類の野菜ジュースが並べられています。
しかし、残念ながらどれを飲んでも①野菜を食べた代わりにはなりません。なぜかと言いますと、「野菜ジュース」というのは野菜の!しぼり持だけを集めたもので、持に入り込めない成分は取り除かれてしまっているからです。野菜ジュースで摂取(注3)できるのは液汁部分の成分だけです。
野菜を食べることが大切、といわれる理由は大きく三つあります。
一番目は野菜に含まれる成分のうち、体内に吸収されて重要な役割を議じる物質が議域できるからです。ビタミン類やミネラル類はもちろん、最近はこれら以外のわずかに合まれる成分にも注同が集まっています。
二番目は、食物繊維(注4)が議最できることです。食物繊維は体内に吸収されない成分であるため、消化管の中を移動し、大使のもととなり便秘を防いでくれます。
三番目はさまざまな荷額の野菜が、味や歯触り、季節感など、私たちの食事を楽しませてくれることです。
生のままで、あるいは、ゆでたり、煮たり、妙めたりなど、どのような調理方法をとるにせよ、野菜を食べる場合には、それを口の中でよくかんで、飲み込んで、すべての成分を消化管に送り込んでいます。歯の弱い人や赤ちゃんには軟らかく煮た野菜をつぶしてドロドロにして食べさせます。この場合も、かむことは省略していますが、野菜全体を食べていることは同じです。だいこんおろしのように野菜をすりおろして食べることもありますが、この場合も野菜全体を食べています。
野菜全体を食べて、はじめて野菜を食べる意味が達成されます。
メーカーや野菜の樟類によって野菜からジュースをしぼる製法は異なりますが、いずれにしても、野菜をいったんすりおろしたり、つぶしたりしてから汁をギュッとしぽりとるわけです。食物繊維やカルシウムなどはしぼり(注5)かすに残る躍の多いことが国民生活センターの笑験からも確かめられています。
(肉橋久仁子r 「食べ物神話」の泌とし穴』講談社による)
(注1)強迫:無理に要求すること
(注2)見込む:予想、したり期待したりする
(注3)摂取:外から取り入れて自分のものにすること
(注4)五栃議議:消化されない食物の成分
(注5)しぼりかす:しぼったあとに残ったもの