(A)

 子どもが親と同じ職業につくことは、昔なら当然のことであった。農民の子は農民に、商人の子は商人になるよう、生まれたときから義務づけられていたと言ってもいい。しかし、近代になると個人の意思を尊重しようという動きが生まれ、f職業選択の自由」が多くの閏々の法律に盛り込まれるようになる。そして、親と同じ仕事を選ぶなんて考えが占い、家に縛られた気の毒な人のすることだ、といった見方さえされるようになった。
 一方で、親と同じ仕事ができるのは恵まれた人だけで不公平だという意見も出てきている。ある種の職業を特定の家の人が独占し、一般の人のチャンスを奪っているというものだ。近年では就職自体が難しくなってきており、ある怠味当然な流れとも言えよう。

(B)

 「職業選択の向由」と言うが、大人になってから選ぶのでは遅すぎるような職業もある。世襲が基本とされている伝統芸能の世界などでは、家庭がそのまま職業訓練の場となっていて、子どもは職業に必要な技能を向然に身につけていくという。幼少時からそのような環境で育った者と、少年期、青年期になってからその職業にっこうとする者とのあいだには大きな差がついてしまう。その差を克服するには、かなりの努力とJ能が必要になる。自由といっても、どんな職業でも選べるというわけではないのだ。
 もちろん、伝統芸能の家に生まれた者にはプレッシャーもあることだろう。しかし、さまざまな長認を親から学べること、学ぶ機会に恵まれていることは、伝統を次世代へつなげていくという意味から大いに評価できるのではないだろうか。

1。 (69)AとBの筆者は『職業選択の自由jについてどのような主張をしているか。

2。 (70) AとBの筆者は、世襲に対してどのような立場で論じているか。