その日の午後になるまでは、だれもそれに気づかなかった。最初に気がついたのは僕だ。本当のことをいえばジョンだけど、ジョンはすぐに僕に教えてくれたんだし、ジョンは僕の犬だから、僕が見つけたと言ってもいいと思う。正直にいえばジョンは僕の犬というわけじゃなくて、 妹と僕の二人のものだけど。そんなことはどうでもいい。ちょっと僕は動揺ど う よ うしているみたいだ。
ジョンが草むらからくわえてきたものを見たとき、僕は始め、おもちゃだとおもったんだ。だれかが捨てた人 形の一部だと。 まさかそれが本物だなんて、 本物の人間の手首だなんて、 思うわけがないじゃないか。ジョンから渡されて手に持ったときだって、 冷たくてカチンカチンだったし、 全然分からなかった。その手に毛が生えているのに気づくまでは。