怒りは、喜びや悲しみと同じように、⼈間の基本的な感情として、その働きやメカニズムが研究されてきた。最近では、⼈間の健康を害するものという観点からも捉えられるようになってきている。例えば、怒りと⼼臓病な関係について検討した研究によれば、⾼⾎圧を伴う⼼臓病の患者には怒りやすい性格の⼈が多いという傾向があるそうだ。また、怒りという感情が神経や免疫(注1)システムに影響を与え、それが⼼臓病になるリスク(注2)を⾼めているのではないかという報告もある。
 怒りと健康の関係が注⽬されるようになったのは、病気に対する社会の考え⽅が変ってきたからだろう。⾼齢化により、社会全体で負担する医療費の問題もばかにならなくなってきた。患者個⼈だけではなく、国や保険会社が負担する医療費も増えてきたのだ。これを抑えるためには、病気を予防することが⼀番である。⾷事や睡眠といった⽣活習慣に気を配すことで病気を予防することは良く知られているが、現代ではさらに、様々な研究結果から、個⼈の性格や考え⽅の傾向といった⼼理的要因も健康に影響することがわかってきた。こうして、⼼理学や医学の分野において、怒りという感情と健康の関連性を考えるようになってきたのである。
(注1)免疫︓体内に⼊った病気の菌などに、体が⾃然に抵抗すること
(注2)リスク︓危険

1。 (1)筆者が、怒りは健康に影響を与えると⾔っている理由は何か。

2。 (2) 筆者が、怒りと健康の関係が注⽬されるようになったのはなぜだと⾔っているか。