優れた短編小説の第一条件は、書き出しのよさにあるのではないでしょうか。この「羅生門」(注1)の書き出しも、忘れがたい魅力を放っています。古めかしい用語が多くて一見堅苦しいようですが、声に出して読んで見るとすんなり耳に入ってきます。決してややこしいことを表現しているわけではありません。一切の(注2)無駄を排し、研ぎ澄まされた(注3)最小限の言葉だけで、鮮やかな情景を浮かび上がらせています。文章はキラキラと装飾されているから詳しいのではなく、むしろ飾りがないから詳しいのだということをあらためて感じます。
(注1)羅生門:小説のタイトル
(注2)一切の︓すべての
(注3)研ぎ澄まされた︓よく磨かれた、不用なものがない。

1。 (1) 筆者は、どんな文章が魅力的だと言っているか。