「見通しのないやつは、成功しないよ」
 「そうだよな。五年後、十年後のことを考えながら人生設計をしないとね」
電車で前に立っていた二人組の会話が耳に入ってきた。てっきり三十代半ばぐらいの人かと思いきや、リクルートスーツを着た若者っであった。厳しい時代とはいえ、これが若者たちの会話だろうか。これから社会に出る新人に戦略なんていらない。 そんなものを抱えても、持てあますだけだ。いるとすれば具体的な戦術だが、いちばんは目の前の課題に真摯に(※1)取り組む姿勢だろう。自分のことも世の中のことも知らないのが若者だが、いろいろな可能性に満ちあふれているのも若者だ。その特権をあっさり放棄して先のことを決めてしまうなど、もったいないではないか。
(注1)真摯に:まじめに、熱心に

1。 (1)筆者が「若者には必要がないこと」と考えているものはどれか。