A

 読書好きの子供たちに、おすすめの本を聞いてみると、「〇〇という登場人物が活躍するシリーズ本!」という答えがよく返ってくる。親世代にも「名探偵シャーロック・ホームズ」(注1) などに夢中になった人がいることだろう。
 今は、子供向けのシリーズものが数多く出版されている。3人組の少年が町に起きた事件を解決するシリーズ、小学生の女の子が温泉の女主人候補として活躍するシリーズ、などが代表的だ。こうした本に親しんでいる子供は「次はどんな展開になるんだろう」とわくわくして次の巻へと読み進み、楽しい読書体験を重ねていく。子供時代のこうした経験は貴重である。将来の読書習慣への第一歩と言えるからだ。
 
 B

 シリーズものというのは、だれにとっても誘惑的な存在です。読書好きな大人でも、気楽に本を楽しみたいときには、好きな作家のおなじみのシリーズを選びがちですが、それは、基本設定や主な登場人物がわかっていて、その世界に入りこみやすく、入ってみたら苦手な世界だったという心配もいらないからです。読書力のない子どもならなおさらで、数をかせぎたい(注2)ときには、探すのも楽、読むのも楽というのは、とても大きな誘惑です。(中略)しかし、成長期の子どもの時間は、九歳の一年と十歳の一年とではまるでちがう、かけがえのないものであって、その貴重な時間が、一人の作家の一つの世界に長期にわたって占領されてしまうというのは、たとえそのシリーズの内容がそう悪くなくても、明らかに問題です。

(注1)シャーロック・ホームズ:イギリスの小説の主人公
(注2)数をかせぐ:ここでは、読んだ本の冊数を増やして学校での評価を高くすること

1。 (1)AとBのどちらの文章にも書かれている内容はどれか。

2。 (2)子供がシリーズものを読むことについて、Aの筆者とBの筆者はどのような立場をとつているか。