地域や⽂化によって⾔語が違うように、⾳楽も違います。
 誰が聞いてもすぐ分かる違いは、リズムです。リズムには、「1・2・3、1・2・3…」と3つずつの拍で進む3拍⼦や、「1・2、1・2…」と、歩くのちょうどいい2拍⼦など、さまざまなリズムがあります。これが⽂化によって違うのです。
 たとえば、⽇本の伝統⾳楽には3拍⼦がありません。3拍⼦は⾺に乗って⽣活する⽂化で作り出されるリズムだと⾔われています。⽇本⼈も⾺に乗ることはあり ましたが、⽣活の中⼼ではありませんでした。⽇本⼈の⽣活の中⼼は昔から農耕でした。だから、⽇本の⽣活には⼀歩⼀歩2本の⾜で歩く2拍⼦がよく、3拍⼦ は使われなかったと( 1 ) 。
 また、⾳楽も違います。⾳楽 ( 2 )、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」という7つの⾳の階段のことだと思う⼈も多いでしょう。しかし、それは、ヨーロッパという地域の⾳階です。地球上の⾳楽のすべてが、このような7⾳階できているのではありません。
 たとえば、アジアには5つの⾳階を使う地域が多いです。⽇本もその仲間です。もっとも、同じ5⾳階でも、⾼さが同じ⾳とはかぎらないので、5⾳階といっても、地域のよっていろいろです。
 ( 3 )、ここまでのことを頭に⼊れて、「⾳楽は世界のことば」というよく使われる宣伝⽂句の意味を考えてください。この⾔い⽅は正しいでしょうか。
 ( 4 ) は明らかです。
 今、世界でもっとも広く使われている⾔語は英語だといっていいでしょう。その英語を使えば、だいたいどこの国に⾔ってもコミュニケーションがとれます。しかし、( 5 ) 、単純に「英語は世界のことば」と⾔えるでしょうか。
 ⾳楽も同じことが起こっているということなのです。

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3。 (3)

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