世の中には、⼈の話を聞くのが実にうまい⼈がいます。そういう⼈は、話す⼈を⾒つめながら表情豊かに興味深そうに反応しながら聞いてくれるので、話す⽅が、⾃分が受け⼊れられているという安⼼感を覚え、その⼈の⽅をじっと⾒つめて放し続けたくなるものです。⾃分にとって好ましい感じの⼈だったり、より親しい⼈であったりすれば、なおさらでしょう。しかし、数⼈で会話をしているときは、注意しなければなりません。⾃分にとって好ましいある特定の⼈ばかりを⾒ながら話を続ければ、それ以外の⼈は⾃分が軽視されているような気になり、いい気分ではないでしょう。等しい割合で視線を送ることが、グループで話すときには⼤切なのです。


 最近「傾聴」という⾔葉をよく聞く。話を聞くときに、相⼿が話したいこと、伝えたいことを、受容的・共感的な態度で聞くことで、もともとはカウンセリングなどで使われる⼿法である。学校で教えられたり企業の研修でも取り上げられたりするからであろうか、話をしているときに「なるほど」「そうですね」「たしかに」などとあいづちを打ちながら話を聞いてくれる⼈が、若い⼈を中⼼に増えたような気がする。それはたいへんに結構なことではある。聞いているのかいないのか、わからないように無反応であるよりは、ずっとよいだろう。しかし、これも度が過ぎれば、「この⼈はいつも聞いてはくれるが、⾃分の意⾒は⾔わない⼈だ」と思われてしまう危険性もある。相⼿が何を求めているのかを注意深く考慮し、時と場合に応じて、聞く態度を調整する必要があるのではないだろうか。

1。 (69)AとBのどちらの⽂章にも触れられている点は何か。

2。 (70)AとBについて、正しいものはどれか