⽇本の鉄道は時間が正確なことで有名だ。それには鉄道に関係する⼈々の努⼒が⽋かせない(注1)。列⾞の掃除もその⼀つである。
 新幹線の場合を⾒てみよう。16両の新幹線ならゴミ出しやトイレの掃除なども⼊れて55⼈が担当する。1両(63〜100席)は普通、⼆⼈で担当する。時間は10〜12分。遅れると乗客に迷惑をかけ、出発時刻も遅らせてしまう。
 担当者は⾞内に⼊ると、まず空いたペットボトル(注2)や⽸を集め、座席の背もたれ(注3)にかかっている⽩い布を取り外す。次に座席を元の位置に戻し、新しい布をつける。ほうきで座席をきれいにし、ひじかけ(注4)をふく。鏡を使って、たなに忘れ物がないか確認する。最後に床を掃く。これを時間内で終わらせなければならない。
 この仕事を12年前にパート(注5)仕事で始めた安喰さんは、それまで主婦をしていたが、家の掃除とは全く違うことに気づかされた。そのため、休⽇に⾃宅の居間に椅⼦を並べて、時間を計って練習したそうだ。2年たつと、時計を⾒なくても残り時間がわかるようになった。その後、仕事が認められて社員となり、8年⽬は作業⻑に、今は550⼈を指導する管理職になった。
 以前、台⾵のため新幹線が遅れて掃除時間が4分しかないことがあった。最低限必要な作業をどうするか、不安な気持ちをおさえ、担当者を集めて細かく指⽰した。決められた時間に出発したときの①うれしさは忘れられなかったという。
 このように様々な⼈々のおかげで②鉄道は正確な時間に⾛れるのである。(朝⽇新聞⼣刊2011年9⽉5⽇より)

(注1)⽋かせない︓必要である。なくてはならない。
(注2)ペットボトル︓飲み物を⼊れるプラスチックの⼊れ物
(注3)背もたれ︓ 座席の背中を⽀える部分(イラスト参照)
(注4)ひじかけ︓座席の腕を休めることができる部分(イラスト参照)
(注5)パート︓普通よりも短い時間だけ働くこと

1。 (13)新幹線の掃除について、本⽂と合っているものはどれか

2。 (14)安喰さんは、どうして仕事がうまくできるようになったか

3。 (15)①うれしさとあるが、なにが嬉しかったのか

4。 (16)鉄道が正確な時間に⾛れるるとあるが、その理由は何か