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 こんなことを言うと①非科学的だと笑われてしまうかもしれないが、人間と機械との間にはどうも相性のようなものがあるように思えて仕方がない。相手は機械なんだから、誰が使おうが作動する時は作動するし、壊れる時は壊れるはず…だのに特定の人間に対してのみ、悪意を抱いているのではないかと疑いたくなる時がある。

 例えば以前、仕事場で使っていた某社のコードレス留守番電話機。②こいつとぼくとの相性は、まことに悪かったと言わざるをえない。買った当初から調子が悪く、急にベルがならなくなったり、会話にひどい雑音が混ざったりしたのだが、どういうわけかぼく以外の人が使うと何の支障も生じないのである。仕様書には「微弱式なので子機は親機から六メーター以内でご使用ください」と書いてあるのに、ぼくが使うと三十センチの至近距離でも、

「ぴーぴーぴーぴー」

と警告が鳴ってしまう。そこでぼくは親機にオデコがひっつくほど接近して電話をかけていたのだが、③これじゃあ何のためのコードレスなのか分かりゃしない。ところが来客たちがこれを使うと、隣の部屋からかけても警告音ひとつ鳴らないのである。

「オメー、体から変な電波をぴろぴろ出してるんじゃねえのか?」

 と友人に言われたりもしたが、断じてそんなことはないッ(と思う)。一応修理にも出してみたが全然ダメで、結局買い換えてしまったのだが、これはやはり相性のせいだと思えてならない。

(原田宗徳『買った買った買った』新潮社)

1。 (4)①非科学的だと笑われてしまうかもしれないと思っているのか

2。 (5)②こいつとぼくとの相性は、まことに悪かったと言わざるをえないとあるが、なぜそう思うのか

3。 (6)③これじゃあ何のためのコードレスなのか分かりゃしないとあるが、筆者が望んでいた電話のかけ方はどれか