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 僕が接してきた学生というのは、国立大学の理系の若者だけです。だから、これが日本の平均的な傾向だとはいえません。ただ、二十年以上、毎年やってくる人たちを見ていて、昔と今の比較はできると思います。

 まず、いえるのは、今の子は相対的に昔の学生よりも大人しくて、礼儀正しく、とても穏やかで素直で良い子が多い、と感じることです。これは、①「近頃の若者は~」なんていうよく聞かれる話とは正反対かもしれません。どうも、若者が礼儀を知らないとか、言葉遣いがなっていないとか、いろいろ言われているようですけれど、そういったもの言いは、きっと②どの時代にもあったことでしょうし、誰だって、歳をとれば、若い人の粗が見えるようにはなるものです。しかし、マスコミもなにかといえば「昔は良かった」という方向へ話を短絡的に持っていこうとしますからね。③そういうふうに見たい、という固定観念がそもそもあるのではないか、とも思われます

 近所で遊んでいる子供を観察しても、今の子供たちは、昔に比べると大人しいと思えます。無茶をしないし、賢くなっているんじゃないでしょうか。

(森博嗣『大学の話をしましょうか』中央公論新社)

1。 (1)①「近頃の若者は~」とあるが、どういう意味で用いられているのか

2。 (2)②どの時代にもあったことでしょうし、とあるが、どうしてどの時代にもあったのか

3。 (3)③そういうふうに見たい、という固定観念がそもそもあるのではないか、とも思われますとあるが、ここで筆者の言いたいことは何か